ビョークが初のセルフ・プロデュースに挑んだソロ3作目アルバム。
前作をさらに進化させたテクノ、ブレイクビーツ寄りに統一されたサウンド、オーケストラやアコーディオンなどのアナログ楽器との融合が独特の空気感を生み出している。
さらに一般的なポップから遠くディープなビョークワールドへ。
- ハンター
- ヨーガ
- アンラヴェル
- バチェラレット
- オール・ネオン・ライク
- 5イヤーズ
- イマチュア(マーク・ベルズ・ヴァージョン)
- アラーム・コール
- プルートウ
- オール・イズ・フル・オブ・ラヴ(ハウィーズ・ヴァージョン)
ビョークが創り出す音の宇宙
過去の2枚のアルバムの成功からビョークは、より自由にサウンドメイクできるチャンスに恵まれた。
スペインのアンダルシア地方で、ゆったりとプロデューサーのガイ・シグスワースをはじめハウィーB、LFOのマーク・ベルらの参謀達を集めてアルバムは制作された。
スペインでレコーディングを行った理由は、ドラムのトレヴァー・モレイがスペインにスタジオを持っていたので、そこで2日間だけフラメンコ・ギターのレコーディングをする予定だったそうだが、ビョークにとって居心地が良く結局半年間も過ごす事になった。
これまで発表された2枚のソロアルバムの内容はバラエティに富んでおり、ある意味分かりやすかった。
しかし、この『ホモジェニック』からは、サウンドに統一感が出ており、自分は今回これで行きたいという意志を感じる。
インパクトありまくりのジャケット写真から始めってオープニングの『ハンター』からそれは顕著だった。
いやゆる日本人リスナーが好きな『サビ』は存在しない。
そんなものはこのビョークの音楽と映像があれば不要なのだと分かる。
シングルカットされた『ヨーガ』は、ビョークにとってお気に入りの曲らしく、複数のバージョンが存在する。
無機質なデジタルビートをベースにしながら、アナログ楽器とビョークの声が乗れば「生命」を感じさせる。
「バチェラレット(bachelorette)』でのビートは、PVの映像どうりに見れば電車の揺れのようだし、心臓の鼓動のようにも聴こえる。
その鼓動のようなビート感はアルバムを通して貫かれており、そのゆったりとした一定のリズムは何割かのリスナーによっては退屈に聴こえるかも知れないが、これがハマると何度でもアルバムの最初から最後までリピートして聴きたくなってくる。
従来のビョークのファンが喜びそうな曲は、アルバムから4枚目のシングルとなった『アラーム・コール(alarm call)』ぐらいかな。
しかし、これもラジオ・ミックスとしてシングル向けにアレンジされたバージョンと比べるとアルバムに収録されたバージョンは、一連のサウンドに馴染むようなアレンジになっている。
1曲ごとに聴いてもよく理解できない楽曲が揃っているが、アルバムトータルで聴くと世界観が統一されており、自然に聴ける。
まるでビョークの世界観で散歩をしているようなヒーリング的効果も味わうことができるかも知れない。
ビョークのアルバムは、作りこんだサウンドばかりだけど特にこのアルバムは、ある程度のスピーカーやヘッドフォンで聴くと魅力が大幅に増してくる。
ただ前作までは一般的な音楽ファンでも付いていけた内容から進化して、この「ホモジェニック』あたりからビョークがかなり聴き手を選ぶアーティストになってきたのは確かだった。
コメント