ついにメンバーは、フェリー以外にマンザネラ、マッケイのみ3人体制になり、いよいよフェリーのソロユニット化してきたロキシー・ミュージック7枚目のアルバム『フレッシュ・アンド・ブラッド』。
音楽的完成度と引き換えに失った物も大きかったが、全英1位を獲得した。
- イン・ザ・ミッドナイト・アワー
- オー・イエー
- セイム・オールド・シーン
- フレッシュ・アンド・ブラッド
- マイ・オンリー・ラヴ
- オーヴァー・ユー
- 霧の8マイル(エイト・マイルズ・ハイ)
- レイン・レイン・レイン
- ノー・ストレンジ・デライト
- ランニング・ワイルド
終焉が見えてくる変化
これまでにブライアン・フェリーは、自分のソロアルバムでのみカバー曲を収録していたが、ついにロキシー・ミュージック名義で2曲も入れてきた。
しかもオープニング曲からウィルソン・ピケットのカバーである『イン・ザ・ミッドナイト・アワー』からスタートするのだ。
もうこの時点でバンドの実権は、完全にブライアン・フェリー1人のものになっており、他のメンバーの影は過去のアルバムに比べてかなり薄い。
『オー・イエー(Oh Yeah)』のPVの映像なんてメンバーは普通のカジュアルファッションで演奏している。かつてのケバいメイクに銀ギラな衣装を着たバンドとは真逆の方向性だ。
音楽的にも収まりのよい耳心地のよいサウンドで初期の頃に比べるとまったく別物のバンドになってきているのが分かる。
これが良いか悪いかは別としてロキシー・ミュージックは確実に聴きやすく売れやすいサウンドに変化していったのは間違いなかった。
『セイム・オールド・シーン』の寸分の隙もないシンセサイザーと生バンドを合わせた演奏は、当時人気のニュー・ウェーブ・バンドとは一線を画す完成度の高いサウンドでのちのテクノブームを予感させるものだった。
タイトル曲である『フレッシュ・アンド・ブラッド』のロック的なギター・リフと『マイ・オンリー・ラヴ』のサックスソロがマンザネラとマッケイの数少ない聴かせどころとなっている。
曲の完成度という面では『恋はドラッグ』をさらに発展させたような『霧の8マイル(エイト・マイルズ・ハイ)』は、フェリー流のロックとブラック・ミュージックの完成形のようだ。
アルバム総評
エディ・ジョブソン脱退でメンバーが抜けた穴は、ガイ・フレッチャー やポール・キャラックといった実績のあるスタジオ・ミュージシャンを起用して、かつてのような隙のあるエキセントリックなサウンドとは対極にある完成度と聴きやすさを重視したAOR路線に大きくシフトチェンジした。
音楽的な完成度を高めた分、フェリー以外のメンバーの個性が入り込む隙が徐々になくなり、フェリーとスタジオミュージシャンで製作できる内容になってきた為にバンドとしての限界が近づいてきたのは必然だった。
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