ザ・ジャム/セッティング・サンズ(The Jam/Setting Sons)

70年代 ロック UK

ポール・ウェラー率いるザ・ジャムの最高傑作の呼び声高い1979年リリースの4thアルバムで全英3位のヒット曲『イートン・ライフルズ(The Eton Rifles)』を収録した『セッティング・サンズ』。
演奏も曲作りも安定感が出てきても疾走感あふれるシンプルなアレンジは相変わらず。

  1. 電話のあの娘
  2. 引き裂かれぬ仲
  3. プライヴェイト・ヘル
  4. 少年の兵士
  5. 不毛の荒野
  6. 燃え上がる空
  7. スミサーズ-ジョーンズ
  8. サタデーズ・キッズ
  9. イートン・ライフルズ
  10. 恋はヒート・ウェイヴ
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ザ・ジャムの代表作であり完成形

かつてはあまりにシンプルすぎてちょっと物足りない感もあったザ・ジャムも4枚目のアルバムになるとすっかり風格が出てきて安定感がある。

ポール・ウェラーのソングライターとしての成長はもちろんの事、リック・バックラーのキレのあるドラムのシャープなリズム、思いっきり強調されたブルース・フォクストンのグイグイくるベースラインに乗せたギターリフはスリーピースバンドならではの一体感のある魅力が詰まっている。

アルバム全体的に演奏がタイトに決まって小気味良いし全10曲ってのも潔くて良い。

特に『プライヴェイト・ヘル』での各パートが一体となった統制がとれた演奏は、並みの若手バンドでは出せないレベルに達している。
たたみかけるビートとギターリフは日本のビート系バンドへの間接的な影響も大きそう。

従来のネオモッズ的なタイプの曲以外にもリコーダーのリフがとても印象的な『不毛の荒野(Wasteland)』の牧歌的でクリーン・トーンを交えた演奏は、後のザ・スミス等のネオアコ勢へ影響が与えたように思える。

バンドサウンドを放棄してコーラスとストリングズのみで構成された『スミサーズ-ジョーンズ(Smithers-Jones)』は、ビート一直線だった、それまでのジャムにはなかった挑戦でサウンドの幅と可能性を大幅に広げる事に成功した。

『燃え上がる空(Burning Sky)』などを聴くとザ・ジャムのバンドサウンド的にはすでに完成形に達していて、これ以上バンドが成長するには変化が必要になる時期になってきているように思える。

パンク的な演奏に60年代風のオルガンのソロが印象的な『イートン・ライフルズ(The Eton Rifles)』は、全英3位にチャート・インしてザ・ジャム初のトップ10ヒットとなった。

The Jam - The Eton Rifles

のちにスタイル・カウンシルでパートナーになるミック・タルボットが参加したマーサ&バンデラスのカバー曲『恋はヒート・ウェイヴ』のジャジーなアレンジはその後サウンドの方向性を予感させて興味深い。

アルバム総評

アルバム全体に幅広い音楽性が混在していて聴き所は多い。

すでにパンクの影響も薄らいで、キンクスやフーの後継者的ないかにもイギリスのバンドらしい風情のサウンドに変化してきた。

キンクスもそうだけど、この手のイギリス的過ぎるバンドって日本人にとってはちょっと取っ付きにくいために、ザ・ジャムも『セッティング・サンズ』というアルバムも過小評価されている気がしてならない。

【アルバムデータ】
チャート 全英4位、全米137位

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