アズテック・カメラ/ナイフ(Aztec Camera/Knife)

80年代 ロック UK

スコットランド出身のネオアコバンドの旗頭、アズテック・カメラ(Aztec Camera)が84年にリリースした2ndアルバム。

メジャーレーベルでは1枚目で代表曲の『スティル・オン・ファイア』と『オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング』を収録。

プロデュースはダイアー・ストレイツのマーク・ノップラー。

  1. スティル・オン・ファイア
  2. ライク・ザ・USA
  3. ヘッド・イズ・ハッピー
  4. 天国への扉
  5. オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング
  6. 過去・未来
  7. バース・オブ・トゥルー
  8. ナイフ
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80年代オシャレ洋楽の代表だった

個人的にはアズテック・カメラと言えば、一番好きな曲の『オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング』が収録されたネオアコというややボンヤリとした音楽ジャンルを体現したようなこの『ナイフ』なんだよなぁ。

アコースティックと言ってもアコギ一本の弾き語りではなくクリーン・トーンのギターサウンド、ブリッド・ポップ伝統の憂いのある湿ったメロディー、そしてソウルの影響を感じる16ビートを取り入れたリズム。

それらの要素を合わせ持っていたのがアズテック・カメラだった訳だけど、その後は音楽性が変化していくのでネオアコと呼べるのはこの『ナイフ』までだろう。

メジャーレーベルから発売されたもののUKアルバム・チャートでは14位、USチャートでは188位と目立った爪跡は残せなかったが、当時は日本での評価はやたらに高かった。

相原コージの『文化人類ぎゃぐ』ってマンガでは、田舎から上京してきた若者が良さが分からないのに雑誌で褒めていたから聴いている音楽の代表として紹介されていて、洋楽を理解できない人ってこんな風に思うのか!?ってちょっとした衝撃だったのを記憶している。

アズテック・カメラの音楽性の良さが分からずに何となく聴いていた層も確かに一定数はいたんだろうけど、いわゆる渋谷系と呼ばれた一部の感度の鋭い若手のミュージシャンにも受け入れられた。

その代表格が2021年の東京オリンピックの開会式で作曲担当ですったもんだあった小山田圭吾が所属していたフリッパーズ・ギターだったりもした。

オープニングの『スティル・オン・ファイア(Still On Fire) 』 から軽快にスタート。この能天気な軽さと間奏のホーンセクションやデジタルベースのアレンジがいかにも80年代で良い感じ。
UKチャートでは83位に沈みヒットはしなかったが、代表曲のひとつと言えるだろう。

Aztec Camera - Still on Fire

『天国への扉』は、アズテック・カメラの曲の中でほとんど話題にならないような曲なのかも知れないが、ネオアコのようでAORやソウル的な要素もある地味ながら隠れた名曲。

シングル曲だった『オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング(All I Need Is Everything)』もUKチャート34位とたいしたヒットにはならなかったが、キャッチーなメロディーとマリンバのトロピカルなアレンジが効いたアズテック・カメラの曲の中でも一番の名曲ではないだろうか。

Aztec Camera - All I Need Is Everything, La Edad de Oro, Madrid 1984

タイトル曲である『ナイフ』は9分以上の大曲だが、肩の力が一切感じられない演奏とスカスカのアレンジ、盛り上がりのない脱力系のフワフワした楽曲展開が賛否の分かれるところか。

その他で面白いのがリリース当初は『オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング』のB面だったヴァン・ヘイレンのカバー曲である『ジャンプ』が収録されている事かな。

これもオリジナルに対して脱力系でアコースティックに徹していて逆の意味で原曲をぶっ壊したアンチテーゼなんだろうか。

アルバム総評

全体を通して聴くと『スティル・オン・ファイア』と『オール・アイ・ニード・イズ・エヴリシング』以外にはこれといった曲もないし、 曲作り的にも演奏的にも拙いかも知れないが、デビュー作にあった瑞々しさを残しつつ、青臭さが取れてきてロディ・フレイムの成長ぶりもうかがえる。

90年代以降のJ-POPに影響を与えたアルバムとしてはもう少し評価されても良いのでは?

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