シーナ・イーストンが1982年にリリースした入魂の3rdアルバム。
プロデューサーのクリストファー・ニールが丁寧に育てたシンガーとしての才能が本格的に開花し、アップテンポからバラードまで堂々と歌いこなすシンガーとして成長ぶりを見せたがセールス的にはチャート下位に沈んでしまった。
全米85位、全英44位。
- パリのウィークエンド
- アー・ユー・マン・イナフ
- ベッグ・フォー・ウォーター
- マシーナリー
- 凍てついた雨
- 囁きはやめて
- マッドネス、マネー&ミュージック
- ふり向けばそこに
- 愛の翼
- ユー・ドゥ・イット
- 冬の部屋
- 優しさはいらない
- さよならを貴方に
音楽性と人気のジレンマ
シーナ・イーストンって2000年代くらいまで日本のCMソングにも使われてたりしたけど、もう滅多に聞かない名前になってしまった。
一般的なイメージだと「シーナ・イーストン?ああ80年代のアイドルでしょ?」みたいな感じだろうか。
本来の英語圏でのアルバムタイトルは『Madness, Money & Music』だったが、日本盤タイトルは先行シングル曲に合わせて『マシーナリー(Machinery)』に改題されてリリースされた。
収録曲は曲順が入れ替わったいくつかのバージョンがあるが、やはりインパクトがあるのはタイトル曲の『マシーナリー(Machinery)』だろう。
それまでのシーナ・イーストンのシングル曲とは違いドラムマシーンにシンセベースを強調したニュー・ウェーブ色が強いやや攻めた曲調だったのが災いしてか、チャートでは全米57位、全英38位とそれまでの勢いが嘘のようにさほどヒットしなかった。
この楽曲は当時日本でノエビアのCMソングに起用されている。
その他のシングル曲ではピアノでしっとりと歌い上げるバラード『ベッグ・フォー・ウォーター(I wouldn’t Beg for Water)』が全米64位とチャート下位にとどまった。確かにアルバムの中の1曲とすれば悪くないがシングル曲としてはインパクトに欠けていたのかも知れない。
イギリスでシングルカットされた従来のシーナ・イーストンファンが喜びそうな『アー・ユー・マン・イナフ(Are You Man Enoug)』もさほどヒットしなかったようだ。
反対にアルバムの為に書かれた楽曲ではないが『愛の翼(Wind Beneath My Wings)』は、シーナ・イーストン名義では残念ながらシングル・カットされなかったが、ベット・ミドラーによって1988年の映画『フォーエヴァー・フレンズ(ビーチズ)』のテーマ・ソングとしてカバーされ全米NO1となりグラミー賞にもノミネートされているのは何とも皮肉な結果だ。
その他の収録曲では特に12曲目『優しさはいらない(Please Don’t Sympathise)』は、ピアノを基調としてアレンジの中にコーラスとサックスが絶妙にからむソウルフルな名曲。
アルバム総評
個人的にはシーナ・イーストンのオリジナルアルバムでは本作がベストと言える。
サウンド的には、ありがちな80年代サウンドだが、チープさは感じないのはクリストファー・ニールの見事なバランス感覚によるところが大きい。
たとえば例によっていかにも80年代っぽいホーン・セクションが入ってたとしても、さほど大げさに感じずデジタル臭くもならず決してシーナ・イーストンの歌の邪魔をしたりはしないので古臭くならず安心して聴ける。
構成的にはシングル向きのアップテンポでわかりやすい曲の他にはバラードが中心でシーナ・イーストンの安定した歌唱力と見事なアレンジのマッチングが素晴らしい。
ただシングル曲以外はいかんせん地味だったかもしれない。
にしてもシーナ・イーストン自体もうちょっと再評価されてもいいんじゃないの?
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