ブライアン・フェリーを中心としたメンバーで結成されたバンド、ロキシーミュージックの1972年リリースのデビューアルバム。
コンセプトは50年代の『ロックンロール』と90年代の『未来』の融合。
- リ-メイク/リ-モデル
- レディトロン
- イフ・ゼア・イズ・サムシング
- ヴァージニア・プレイン
- 2 H.B.
- ザ・ボブ
- チャンス・ミーティング
- ウッド・ユー・ビリーヴ?
- シー・ブリーズィズ
- ビターズ・エンド
ロキシーミュージック結成
ブライアン・フェリーとグラハム・シンプソンが意気投合して1970年に結成してメンバーを募集、アンディ・マッケイ、ブライアン・イーノ、ポール・トンプソン、フィル・マンザネラが加入する。
1972年2月、EL&Pやキング・クリムゾンが所属する音楽事務所、EGにマネージメント契約が決まり、3月にレコーディングを開始する。
しかし、5月に早速オリジナル・メンバーだったグラハム・シンプソンが脱退してしまう。
ジャケット写真を見ても彼だけが普通で音楽的な趣向も個性が強いメンバーから浮いていたようだ。
5月27日にグレート・ウエスタン・エクスプレス・フェスティバルにてステージ・デビューを飾る。
6月16日にアイランド・レコードからリリースされたデビュー・アルバムが本作となる。
バンドメンバー
ブライアン・フェリー(Vo,Key)
1964年にバンド・デビュー後に美術教師などの職を転々とした後、70年に音楽界に戻り、ロキシーミュージックを結成。ほとんどの作詞・作曲を担当。
アンドリュー・マッケイ(Sa)
12歳から音楽学校でオーボエを学び、いくつかのバンドを渡り歩き、イタリアでは実験音楽をしてロンドンに戻り、ロキシーに加入。
ブライアン・イーノ(Sy)
美術学校を卒業後に大学で絵画や彫刻を学んだ後にマッケイに誘われロキシーに加入。
宇宙人的なファッションと容姿でフェリーよりも人気があった。
フィル・マンザネラ(Gt)
ロンドンで誕生後に幼少期をキューバ、ハワイ、ベネズエラで過ごす。
大学を中退後にバンドを結成したが、自然消滅となり72年ロキシーに加入。
ポール・トンプソン(Dr)
自己流でドラムをマスターし、プロとして数々のレコーディングに参加後、71年にロキシーに加入する。
音楽的素人ならではの斬新な音楽
初めてロキシーミュージックのオープニング曲『リ-メイク/リ-モデル』を聴いた時の衝撃は忘れられない。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとキング・クリムゾンに影響を受けてバンド始めたばかりの初心者メンバーがいっせーのっせ!で音を出して奇跡的にうまく出来上がったような曲だ。
フェリーの引きつったヴォーカル、マンザネラの初心者が知ってるフレーズ次々に弾きまくってようなギター、マッケイの不安定な走り気味なサックス、そしてイーノによる曲と全く関連性のないシンセサイザーのノイズ。
でたらめに演奏しているようでも不思議と調和が取れている恐ろしく前衛的かつポップな曲だった。
初期のロキシー・ミュージックの曲作りは、まずフェリーがコード進行を作り、リハーサルを行い各メンバーが好きなようにアレンジをしていくというスタイルだった。
その為、どの楽器パートも目立とうとしてスタンド・プレイに走りがちだったが、その素人感覚が実に面白かった。
また、曲タイトルはフェリーが決めていたが、『パジャマラマ』、『2 H.B』、『レディトロン』等、意味不明だが、感覚的で近未来的な後のサイバー・パンクに近いイメージがあった。
そんな未来的なタイトルが付けられた『レディトロン』は印象的だ。
ロックバンドには珍しいマッケイのオーボエの静かなイントロから始まり、徐々に曲は盛り上がりを見せ後半のマンザネラによるノイジーで暴力的なギターとイーノによるシンセノイズで曲はクライマックスを向かえる。
さらにカントリー調のギターから始まり長めのギターソロから退廃的な近未来サウンドへ変化するプログレ風の『イフ・ゼア・イズ・サムシング』は、まさに古典と未来の融合だった。
『ザ・ボブ』の戦争をイメージさせるSEに続いてロックン・ロールが突然始まる展開はとても映画的で映画館から名付けられたこのバンドらしい演出だ。
アルバム中盤以降はフェリーのアイディアをメンバーが未消化なままにレコーディングしてしまった感じがあり惜しい感じがする。
『ウッド・ユー・ビリーヴ?』のようなポップかつキッチュな感覚があった曲がもう1曲ほど欲しかった。
アルバム総評
アイディアは満載で聴き所は多いが、ロキシー・ミュージックの中でも決して聴きやすい作品ではない。
72年発表のアルバムにしてはかなり音質が良く、現在では当たり前になっているプロモーション・ビデオを作る事やアルバム・ジャケットにメンバーが登場しないで流行モデルを使うと言った先進的な要素もあった。
ブライアン・フェリーの鼻にかかった粘着質なヴォーカルやシンセサイザーのノイズ的な演奏など、音楽的にも後のニューウェーブ以降に与えた影響は非常に大きかった。
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