ビョーク/デビュー(Bjork/Debut)

Bjork

シュガーキューブスを経て93年にリリースされたビョークの記念すべきソロデビューアルバム。
これ以降のビョークの音楽性からするとだいぶまっとうなポップソングながら、すでの唯一無二の個性を発揮して全英チャート3位を記録。

  1. ヒューマン・ビヘイヴィアー
  2. 泣きぬれて
  3. 少年ヴィーナス
  4. ライフ・ザン・ディス
  5. ライク・サムワン・イン・ラヴ
  6. ビッグ・タイム・センシュアリティ
  7. ある日
  8. 飛行機
  9. 来て…
  10. ヴァイオレントリー・ハッピー
  11. アンカー・ソング
  12. アトランティック
  13. プレイ・デッド (ボーナス・トラック)
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バンドサウンドからクラブサウンドへ

シュガーキューブス解散後(正式にはしてないんだっけ?)のビョークにはソロデビュー前からすでに注目が集まっていた。

そのエモーショナルで個性的な声、童女のようなルックス、アイスランドという独特で神秘的なバックグラウンド、ソロアーティストとして成功する条件はそろっていたと言っていい。

ビュークなら何か面白いソロアルバムを創ってくれるかも?そんな空気があった。
その期待に見事にこたえたのがこのデビューアルバム、その名も『デビュー(Debut)』だった。

サウンドはシューガーキューブスのようなバンドサウンドではなく(エレキギターの音がほとんど入っていない徹底ぶり)、プロデューサーのネリー・フーパーの得意なクラブサウンドを中心に仕上げている。

さすがに93年の発表から長い年月が過ぎているので、今聴くとサウンドが一部古いかなと感じる部分もあるが、そこにビョークの独特の声と演歌のようなコブシがかかると独特の世界観が出来上がる。

初っ端の『ヒューマン・ビヘイヴィアー』を聴いた時点で、「お!?これまで聴いてきた音楽とは違うぞ」というような雰囲気を感じさせるアルバムだった。

björk : human behaviour (HD)

そういやこの93年という時期は、曲名にまだ邦題をつけていた時代なので.『泣きぬれて』なんて演歌みたいな曲名がつけられて妙に違和感があるやら面白いやら。

まだビョーク自身が全面的に作曲した曲はないようだけど十分に個性は発揮しているのは、プロデューサーのネリー・フーパーによる非常にすっきりとした音作りに加え、スパイスに民族楽器を取り入れた多彩な引き出しをもったプロデュースによるところが大きい。

バーのトイレで録音したという『ライフ・ザン・ディス(There’s More To Life Than This)』のダンスフロアのドアを開ける音と閉める音、そしてまわりの騒がしさがカットされビョークのヴォーカルのみがフィーチャーされる演出は当時としては斬新だった。

この辺りの作り手の細かいこだわりはステレオのヘッドフォンで聴かないと分かりにくい部分かも知れない。

Björk - There's More To Life Than This

当時流行のリズムを取り入れた『ビッグ・タイム・センシュアリティ』は、他のシンガーが歌っていたら普通のダンス・ミュージックになりそうだが、後半に行くに従って強くなるビョークのクセのある独特のコブシによって強烈な個性が生まれている。

Bjork - Big Time Sensuality (Album Version)

クラブサウンドとの対比で『ライク・サムワン・イン・ラヴ』などは伴奏はハープのみ、『アトランティック』ではリコーダーのみというシンプルさでコントラストを見事につけている。

その中でもアルバム収録中、特に印象に残った曲の『来て…(come to me)』は、シンプルなビートで歌い上げる素朴な曲だが、どこか冷たく神秘的なイメージは故郷のアイスランドをどことなく連想させる。

アルバム総評

アルバム『デビュー』は、シュガー・キューブスのファンがビョークがソロデビューしたらもっと面白い音楽をやってくれるかも知れないという期待を軽く飛び越すユニークで斬新なサウンドだった。

しかし、それはその後のビョークサウンドの序章に過ぎなかったのだった。

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