ルー・リード/無限大の幻覚 メタル・マシーン・ミュージック(Lou Reed/Metal Machine Music)

70年代 ロック US

75年発表のルー・リード最大の問題作。
アルバム収録曲のすべてがメロディーなし、歌なしのギターノイズのみ。
なのになんでこんなにも心地良いんだ!?

収録曲
  1. メタル・マシーン・ミュージックA-1
  2. メタル・マシーン・ミュージックA-2
  3. メタル・マシーン・ミュージックA-3
  4. メタル・マシーン・ミュージックA-4
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ギターノイズだけなのに2枚組って!

この作品は聴いた人の判断にゆだねますとか、聴き手を選ぶとか言われるアーティストやアルバムがあるけど、このルー・リードの『無限大の幻覚メタル・マシーン・ミュージック』はその究極とも言えるアルバム。

なんせアルバムの最初から最後までずっとノイズしか収録されていない。
しかも楽器パートはギターのみ!

音楽の3大要素のリズム、メロディー、ハーモニー、その全てが見当たらない!

このとんでもない内容に発売を渋るRCAを押し切りリードはアルバムを発表、リリースされるや「聴くに耐えない史上最低のアルバム」と各メディアから酷評され発売後3週間で回収となった。

4ブロック構成でLPでは2枚分のAB面、CDでは全曲まとめて収録時間はそれぞれ16分1秒で収録されている。

特にブロックによる明確な違いはなく、楽器毎にパート分けされている訳でもなく、ただひたすらギター・ノイズの垂れ流し状態が収録されている。

しかし、単にラリって一発録りをした訳ではなく、いくつものエレキギターを重ね録りする事で不思議なノイズ・アンサンブルが生まれている。

そして何が一番スゴイかって言うと、発表当時これをLP2枚組で発表した事。
ノイズしか収録されてないのに2枚組って意味不明なんだけど、なんかスゲエって思っちゃう。

ブライアン・イーノがロバート・フリップと組んでいた一番ぶっ飛んでいた頃の作風に近い。

夜中に放送されていないテレビのザーっていう砂嵐を見ているような感覚が最初から最後まで続くのみ。
不思議と不快感はなくすんなり入っていく。

現代だったら手っ取り早くノイジーなサウンドを作ろうと思ったら、サンプリングなんだろうけど、手作業ならではの妙な味わいがある。

LPではラストがループ構造になっていたらしいが、CDではフェイド・アウトとなっている。

このアルバムの失敗でリードは、謝罪したという話があるけど、それがRCAに対してかファンに対してだが内容が分からないし、事実なのかも調べても分からなかった。

そもそもそんな事するような人に思えないんだけど。

アルバム総評

ルー・リードは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代からギターのフィード・バック・ノイズを多用する演奏をしていたが、曲本体は置いといてギター・ノイズのみに特化したのが本作といったところか。

無限大の幻覚メタル・マシーン・ミュージック』を聴き終えた印象は、やさしく美しいノイズ。

アルバムを聴き終えた頃には、なぜか心が癒されているようなアンビエントなヒーリング・ミュージック的な効果を感じる。

リードが愛したドラッグのヘロイン的なダウナーなトリップ感もあり、邦題の『無限大の幻覚』とはなかなか的確で見事なタイトル。

このアルバムがなかったらソニック・ユースのようなバンドも生まれなかったかも知れない。

しかし、こんな実験的なアルバムが日本市場で日本語解説付きで発表されることはもう2度とないだろう。

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