22年ぶりにトニー・ヴィスコンティがレコーディングに参加した事が明らかにプラスになりサウンドが安定、ピート・タウンゼント、カーロス・アロマーなどの参加メンバー等を考えてもキャリアの総括ともとれる内容で、意欲的で年相応のバランスの取れたアルバム。
01.サンデー
02.カクタス
03.スリップ・アウェイ
04.スロー・バーン
05.アフレイド
06.アイヴ・ビーン・ウェイティング・フォー・ユー
07.アイ・ウッド・ビー・ユア・スレイヴ
08.アイ・トゥック・ア・トリップ・オン・ア・ジェミニ・スペースシップ
09.5:15 エンジェルズ・ハヴ・ゴーン
10.エヴリワン・セズ・ハイ
11.ベター・フューチャー
12.ヒーザン(ザ・レイズ)
13.ウッド・ジャクソン (Bonus Track for Japan Only)
トニー・ヴィスコンティと久々にタッグ
70年代の名盤の数々をプロデュースしたトニー・ヴィスコンティと22年ぶりに共同プロデュースで組んだ事に関してボウイは、テレビ番組のジュールズ倶楽部の中で「意見の衝突もなくなって僕らは友達になったんだ」語っている。
つまりやはりヴィスコンティとは喧嘩別れだった訳だけど、時間の経過により元の友達関係に戻ったのだろう。
ちなみにボウイ自身のアルバムで一番のお気に入りの曲は、『5:15 エンジェルズ・ハヴ・ゴーン (The Angels Have Gone)』だそう。
『ヒーザン』の冒頭を飾るのは『Sunday』、70年代後半のベルリン時代を連想させる暗く陰鬱なアレンジのこの曲にある緊張感は80年代以来久しくなかった。
そしてシングル曲になった『スローバーン』、この曲のギターリフはヒーローズの焼き直し・・でもそんな事はどうでもいい。
この硬質なサウンドアレンジとコーラスもどうしてもベルリン時代を思い起こさせる。
デヴィッド・ボウイにとってのゴールデン・イヤーズ、あれから20年以上経過しているのに続編が聴けたような錯覚だけで充分だ。
『スローバーン』以外でもう2つ素晴らしい曲の一つが『5.15 The Angels Have Gone』。
肩の力が抜けた伸びやかなヴォーカルはこの時期のボウイならではの名曲。
ストリングスアレンジとコーラスの入れ方、突然の転調などボウイの楽曲の特徴が詰め込まれた『Everyone Says ‘Hi’』はハンキー・ドリーに収録されていてもおかしくない出来栄えだ。
初回盤のオマケディスクには『Sunday』のモービーミックス等の珍しい音源が揃っていて聴き所が多い。
緊張感はありつつもベルリン時代みたいに一触即発な感じではなく、一呼吸置いた大人の余裕を感じるが、それがつまらないと言われれば返す言葉はない。
肩の力が抜けて楽になったのか、『ヒーザン』発表時のデヴィッド・ボウイは何度目かの好調時にあった。
そしてこれが彼のキャリアで最後のピークだったように思えた。
しかし、ボウイは『ヒーザン』、その翌年の『リアリティ』の発表から10年間の沈黙の後にアルバム『ザ・ネクスト・デイ』で見事復活したのだった。
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