変貌を続けた自身の未来を予見したシングル曲『チェンジズ』を収録。
アルバムとしては全英3位を記録して初ヒット。
『火星の生活』『クイーン・ビッチ』等、ツアーの定番曲も収録されているバラエティに富んだ充実のアルバム。
- チェンジズ
- ユー・プリティ・シングス
- 8行詩
- 火星の生活
- クークス
- 流砂
- フィル・ユア・ハート
- アンディ・ウォーホール
- ボブ・ディランに捧げる歌
- クイーン・ビッチ
- ザ・ビューレイ・ブラザース
くすぶっていた才能が一気に開花!
前作世界を売った男の暗さと重さは全く感じられないポップで明るいアルバム。
どうやら前妻アンジーとの結婚と息子ゾウイ(のちの映画監督ダンカン・ジョーンズ)の誕生が大きな転機となったようだ。
製作と録音はあのジギー・スターダストと同時進行で製作されたが、こちらの『ハンキー・ドリー』は、キャラクターのあるコンセプトアルバムではなく、バラエティに富んだ曲が無造作にアルバムに積み込まれた内容でデヴィッド・ボウイの歌唱もバンドのスパイダーズもリラックスした演奏で展開していく。
オープニングの『チェンジズ(Changes)』は長年変化し続けるデヴィッド・ボウイ自身のテーマソングとも言うべき曲でライブの定番でもある。
2006年には、SANYO eneloop(サンヨーエネループ)のCMソングに起用されている。
『ユー・プリティ・シングス(Oh! You Pretty Things)』は息子ゾウイが生まれた喜びを曲にしたものだが、珍しくピアノが伴奏のメインの曲で歌い上げる名曲。
ちなみに動画のボウイのピアノはフェイクで実際はミック・ロンソンが演奏した音源を使用している。
『火星の生活(Life on Mars)』は、あの有名なフランク・シナトラの『マイウェイ』からコード進行をパクッたらやっぱり名曲になってしまったという曲。
実は『マイ・ウェイ』にはフランス語の『コム・ダビチュード』という原曲がある。
これにボウイが英詞を付けたのが『Even a Fool Learns to Love』という曲で歌詞自体もネット上で見る事ができる。
しかし、結局採用されたのはポール・アンカの歌詞だった。
ボウイはこれがよっぽど悔しかったのかパロディーとして作曲したいきさつがある。
歌詞はボウイ独自の世界観があり、映画に没頭する少女から火星にまで話が広がるとり止めの無さがなんだかすごいスケール。『フランク・シナトラに捧げる』のサブタイトルまで付けられている。
『流砂(Quicksand)』も独特の世界観の詞と転調を利用した大胆かつ繊細なコード進行で人気のある曲。晩年にツアーのレパートリーにもなっていた名曲だが2000年以降では『ハンキー・ドリー』のオリジナルバージョンよりもキーを下げて歌っているが仕方のないところか。
そのほかにもアンディ・ウォーホール本人の目の前で演奏して演奏中に席を立たれたいう逸話のある曲、『アンディ・ウォーホール(Andy Warhol)』、ルー・リードの歌い方を真似た歌唱とミック・ロンソンの荒々しいギター演奏が元祖パンクとも言われる『クイーン・ビッチ(Queen Bitch)』、当時は精神病院に入院中で後に鉄道自殺した兄テリーの事をテーマにした謎めいた歌詞の『ザ・ビューレイ・ブラザース(The Bewlay Brothers)』等、聴き所は満載。
ライコ版デモトラック
90年代に発売されたライコ版では、『ボマーズ(アルバム未収録)』『スーパーメン(世界を売った男収録のバージョン違い)』『流砂(デモトラック)』『ザ・ビューレイ・ブラザース(デモトラック)』の4曲がボーナストラックとして収録されていた。
デモトラックは、アコギ中心の弾き語り演奏だが完成形にはない魅力もある。
アルバム総評
この作曲能力、歌いっぷり、この当時のボウイがどれだけ好調だったのかは簡単にわかると言うもの。
メロディ、詞、アレンジ、すべて申し分なく、『ハンキー・ドリー』はデビューからくすぶっていたボウイの才能がついに開花したアルバムだ。
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