コンスタントにアルバムを発表してきたボウイの中でも1年3ヶ月とかなり短いスパンで2003年に発表されたアルバム。
ジギー・スターダスト⇒アラジン・セイン、ロウ⇒ヒーローズの流れを見てもこれは好調の証と言って良いだろう。
ジョナサン・リッチマンのカバー曲、『パブロ・ピカソ』とジョージ・ハリスンのカバー曲、『トライ・サム、バイ・サム 』も収録。
- New Killer Star
- Pablo Picasso
- Never Get Old
- The Loneliest Guy
- Looking For Water
- She’ll Drive The Big Car
- Days
- Fall Dog Bombs The Moon
- Try Some, Buy Some
- Reality
- Bring Me The Disco King
- Waterloo Sunset
- Fly
- Queen Of All The Tarts (Overture)
- Rebel Rebel
ペルソナを捨て等身大のロックスターへ
『リアリティ』は特にコンセプトも決めずに製作されたおそらくデヴィッド・ボウイのアルバム中最も自然体なアルバムだろう。
曲の繋がりもあまり考慮されずに気に入った曲を作り、カバーしレコーディングされた感じがする。
アルバムの冒頭を飾る 『ニュー・キラー・スター』についてボウイはこんな風に語っている。
この曲は、最後の1本のわらにすがりながら充実した人生、あるいは僕たちを取り込む混乱の中に希望の兆しを求めている歌なんだ。
少なくとも90年代のボウイの楽曲にはないポジティブさを感じずにはいられない。
この曲でアルバムへの期待は自然に高まるというものだろう。
一番の注目はやはりシングルカットされた『 Never Get Old』
この曲は清涼飲料水Vittel(ヴィッテル)のCMソングとして日本でもお茶の間レベルで聴く機会があった楽曲でジギー・スターダストをはじめとするボウイが演じてきたキャラクター達が登場する映像も話題になった。
▼日本で放送されたCM
逆に『The Loneliest Guy』は恐ろしく退屈だし『 Looking For Water』はどう聴いても『レベル・レベル』の中途半端バージョン。ここだけがアルバム中唯一の弱点。
そんなイマイチな曲もありつつも『Days』の存在が光る。
世界を売った男 に収録されていてもおかしく無さそうな好調時の、あまりにも自然体なボウイ節とも言える味がある。
タイトル曲の『Reality』はアップテンポのロックナンバーでこれが50歳を過ぎたアーティストの曲とヴォーカルなのかと思うほど若々しい。
『リアリティ』というタイトルを付けたのは半分気まぐれだったんだ。
最初に書いた曲を選んでこれをタイトルにすればいいと簡単に決めた。
リアリティという言葉に疑問を投げかけている。
すべての人の現実はあくまでも主観的。
リアリティ(現実)という言葉に対して、非現実と抽象は並列の関係にある・・・
その次の『Bring Me The Disco King』は一転してスローテンポのジャジーなナンバーでこの落差と展開はすごく効果的。
この2曲はリアリティツアーでも好評だった。
このツアーで日本では8年ぶりにライブが武道館などで行われた。
当時の記者会見の映像があった。
アルバム総評
『リアリティ』の楽曲は21世紀のデヴィッド・ボウイのアルバムの中でもかなり安定して出来が良く安心して聴ける。
ただ日本盤のオマケ曲のキンクスの『Waterloo Sunset』のカバーがあまりにも素晴らし過ぎてアルバムの内容がかすむほどだったのはボウイも計算外だったのではないか。
逆に言うとこの曲が収録されているから絶対に日本盤を購入した方が良い。
過去、デヴィッド・ボウイは『ジギースターダスト』、『シン・ホワイトデューク』等の数々のキャラクターを演じてきた。
そしてそのキャラクターを演じるのがしんどくなって来た時に、仮面を捨ててきた。
リアリティ発表後のデヴィッド・ボウイはついにデヴィッド・ボウイという仮面を捨てて本名のデヴィッド・ロバート・ジョーンズとして平穏に暮していたのだろうか。
リアリティを聴く限り、デヴィッド・ボウイはノリにノっていて健康上の問題も無さそうだったし、まさかこれから10年も音沙汰なしになるとは誰が思うだろうか。
その後のインタビューによるともうツアーに出る気も新作を作る気もないとも言っていたらしい。
ミスター・ボウイあなたはやっぱり嘘つきでしたね。
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