デヴィッド・ボウイ/ネヴァー・レット・ミー・ダウン(David Bowie/Never Let Me Down)

David Bowie

前作『トゥナイト』から満を持して3年で発表されたファン待望の原点回帰のパワフルなロックアルバム!のはずが?出来上がったのは『レッツ・ダンス』の成功の余韻から抜けだせないままの気の抜けた、ありきたりな80年代風の産業ロックだった。

デヴィッド・ボウイの音楽史上に燦然と輝く大失敗アルバム!(本人公認)全英6位、全米34位。

  1. デイ・イン・デイ・アウト
  2. タイム・ウィル・クロール
  3. ビート・オブ・ユア・ドラム
  4. ネヴァー・レット・ミー・ダウン
  5. ズィーロウズ
  6. グラス・スパイダー
  7. シャイニング・スター
  8. ニューヨークス・イン・ラヴ
  9. ’87・アンド・クライ
  10. バン・バン
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栄光から挫折へ

80年代に入ってからのデヴィッド・ボウイは、ミュージシャンとしてではなく俳優として注目され、また本人もそちらのほうに力を入れていたためボウイ自身がかつてのように音楽活動に情熱とエネルギーをつぎ込めなくなっていた。

その証拠にそれまではどんなプロデューサーと組んでも共同でプロデューサーとしてデヴィッド・ボウイの名があり実際にボウイ本人によってプロデュースされていたが、『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』ではクレジットはデヴィッド・リチャーズと共同ながら、実質的な仕事は丸投げ状態だったと後にデヴィッド・ボウイ自身がインタビューで認めている。

それにより『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』のサウンドの方向性が失われ、いかにも80年代的な薄っぺらでありきたりなアルバムになってしまった。

サウンドアレンジは、コンプレッサーが思い切りかかったギター、エコーがかかりまくったコーラスとドラムのスネア、ホーン・セクションのフィル・イン等、当時の流行をそのまま取り入れてしまい、常に時代を先取りしてきたデヴィッド・ボウイが完全に後追いに回ってしまっている。

そしてこれらのアレンジの大半はアルバム『レッツ・ダンス』でボウイ自身が流行させたものだった。

ギタリストのピーター・フランプトンが何の脈絡もなく参加しているが、元同じ高校の後輩という以外、共通点がないような2人の音楽性はかみ合わないままだった。

ボウイ自身、後にこのアルバムを振り返って「あれは本当に自分が作った作品なのか?と思った」と語っている。

アルバムの中の救い

それでも『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』の曲自体がそれほどひどいという訳では決してない。

ファルセットで最初から最後まで歌いきるタイトル曲『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』のノスタルジックなハーモニカとキャッチーなメロディーは、やはりまぎれもなくボウイの曲だが、デヴィッド・ボウイの楽曲としての水準に達しているのはアルバムの中でこの曲くらいしかないのは寂しい。

David Bowie - Never Let Me Down (Official Video)

他にはなぜかミッキー・ロークがラップで参加している『シャイニング・スター』は単純に楽しい曲に仕上がっている。

BOWIE ~ SHINING STAR ~ LIVE REHEARSAL 87

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幻の曲?

実は『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』の最初の日本盤には、現在ではカットされてしまっている幻の2曲が収録されている。

ボウイの低迷期には300円くらいで投げ売られていた最初の日本盤が、幻の楽曲が2曲収録されているという理由でボウイの死後、海外のマニアも欲しがりプレミア的な価値が出始めている。

ガールズ日本語バージョン

たどたどしい日本語で歌う『ガールズ』の日本語バージョンという日本独自のおまけ曲が収録してあったが、再発された時に英語版に差し替えられキレイさっぱり無くなってしまった。

それが唯一のお楽しみって感じだったので非常に残念!
でも今はYouTubeって便利なものがあるので簡単に音源が見つかるのだ。
これが『ガールス』日本語バージョンだ!

Too Dizzy

リマスターする際にボウイの指示でガールズの日本語版と同様に抹殺された曲が、『Too Dizzy』だった。
アルバムの他の楽曲から浮いていないし、曲の出来も悪くないのにカットされた理由は不明のままだった。

David Bowie - Too Dizzy 1987 🙂 (+Lyrics)

アルバム総評

アルバム『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』の内容をまとめるとアレンジとプロデュースがあまりにもお粗末すぎた。
曲自体は悪くなくても音楽的にはデヴィッド・ボウイが製作する必要のある内容ではなかった。

デヴィッド・ボウイに関して深く知らない人が聴けば、手堅く無難にまとめたポップ・ロック・アルバムと感じるかも知れない。

しかし、そんなアルバムはボウイの本質からは最も外れた物のはずだった。

レッツ・ダンス』や『トゥナイト』のようにシングルヒットにも恵まれず、気付いたらナイル・ロジャースは去り、ミック・ロンソンもブライアン・イーノもトニー・ヴィスコンティすらいなかった裸の王様状態。

この後デヴィッド・ボウイは、ティン・マシーン(Tin Machine) でのバンド活動を挟み90年代前半まで長い長いリハビリ生活に入るのだった。

しかし、あらためて考えるとこのアルバムが音楽的にもセールス的にも失敗して本当に良かった。


もしうまく言っていたら、ボウイ自身もこれで良いのだと思ってこの路線を突き進もうとして本当に終わっていたかも知れない。


Itunes試聴&ダウンロード
Never Let Me Down (2018 Remaster)
デヴィッド・ボウイ

【アルバムデータ】

  • リリース 1987年
  • プロデュース デヴィッド・リチャーズ&デヴィッド・ボウイ


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