結果的にデヴィッド・ボウイにとってラストツアーとなったリアリティ・ツアーの2003年11月に行われたアイルランドの首都ダブリンでのライブ音源を収録した2枚組アルバム。
すでにDVD化してあった音源をリマスターして3曲のボーナストラックを加え『カクタス』のみ別テイクに差し替えてある。
- 愛しき反抗
- ニュー・キラー・スター
- リアリティ
- フェイム
- カクタス
- シスター・ミッドナイト
- アフレイド
- すべての若き野郎ども
- ビー・マイ・ワイフ
- ザ・ロンリエスト・ガイ
- 世界を売った男
- 素晴しき航海
- ハロー・スペースボーイ
- サンデー
- アンダー・プレッシャー
- 火星の生活
- バトル・フォー・ブリテン
ラストツアーになったリアリティ・ツアー
アルバム『リアリティ』リリース後にデヴィッド・ボウイは、史上最大規模のワールド・ツアーを行った。
選曲はサウンド&ヴィジョンツアー以降はなかったオールタイム・ベスト的なもので、ギタリスト、アール・スリックによると、このツアーでのボウイはいつになくオープンで接しやすかったらしい。
ツアーは中盤までは順調だったが、オスロ公演で観客の投げたキャンディーの棒がボウイの左目に刺さるトラブルがあった辺りから暗雲が立ち込める。
さらに6月のドイツ、シェーセル公演で心臓発作になり、以降のツアーは全てキャンセルとなった。
そしてその後ボウイは10年間の活動停止となり、2度とワールド・ツアーは行っていないので結果的に最後のツアーとなってしまった。
日本公演は、その3カ月前に日本武道館で行われていた。
そう考えるとキャンセルになる前に日本公演を観る事ができたのはラッキーだった。
私が観に行ったのは2004年3月8日の日本武道館公演だった。
2000年代に入ってからボウイは再評価され出して、その前のアウト・サイドツアーの時よりも客層が若返っていたのが印象的だった。
それまでは現役のアーティストとして新曲にこだわり、引退覚悟だったサウンド&ヴィジョンツアー以外では決してオール・タイム・ベスト的なセットリストは組まなかったボウイだったが、過去の名曲がちりばめられたリアリティ・ツアーのステージ上では何か肩の荷が下りたかのようにリラックスした雰囲気があったライブだった。
オープニングは、『愛しき反抗(レベル・レベル)からスタート。
曲終わりで「Tokio」って言ってるように聞こえるんだけど、この曲だけ日本公演の音源って事ないよね?
当時新曲だった『ニュー・キラー・スター』から『リアリティ』までの流れが非常に良くタバコを止めたおかげで声も良く出ていて、この頃のボウイの好調ぶりがうかがえる。
『カクタス』は、間奏でT・レックスの『ゲット・イット・オン』を口づさむバージョン。
『シスター・ミッドナイト』は、アルバム『ロジャー』に収録された『レッド・マネー』の原型となった歌詞違いの曲でイギー・ポップとの共作。
なぜ今さらこの曲を取り上げたのかは謎だが、かなりレアな選曲だ。
定番曲の『すべての若き野郎ども』や『世界を売った男』はオリジナルに近いアレンジ。
ちょっと意外だった選曲が『素晴しき航海』だった。当時のライブ会場でも「おーこの曲やるのか」っていう心地よい裏切りがあった。
前半のクライマックスはクイーンとの共作の『アンダー・プレッシャー』
フレディ・マーキュリーのパートは、ベースのゲイルが担当。
彼女は当初フレディの代役なんて無理だと提案を断ったが、ボウイの「君ならできる!」という熱心な説得を受け入れ、見事にやり切ったのだった。
- アッシェズ・トゥ・アッシェズ
- ザ・モーテル
- ラヴィング・ジ・エイリアン
- ネヴァー・ゲット・オールド
- チェンジス
- アイム・アフレイド・オブ・アメリカンズ
- ヒーローズ
- ブリング・ミー・ザ・ディスコ・キング
- スリップ・アウェイ
- ヒーザン(ザ・レイズ)
- 5年間
- 君の意志のままに
- 屈折する星くず(ジギー・スターダスト)
- フォール・ドッグ・ボムズ・ザ・ムーン (BONUS TRACKS-PREVIOUSLY UNRELEASED)
- 壊れた鏡 (BONUS TRACKS-PREVIOUSLY UNRELEASED)
- チャイナ・ガール (BONUS TRACKS-PREVIOUSLY UNRELEASED)
リアリティ・ツアー独自のアレンジが光るのが『ラヴィング・ジ・エイリアン』
クリーン・トーンとアコギのギター2本のみでテンポを落として演奏されているのが印象的。
当時ヴィッテルのCMソングになった『ネヴァー・ゲット・オールド』での歌唱は、非常にパワフルでアップテンポの新曲でもボウイはまだ観客を魅力する事ができる事を証明した。
ライブの定番曲である『チェンジス』や『ヒーローズ』は、余計な物を削ぎ落したようにシンプルなアレンジとなっている。
スローナンバーの『ブリング・ミー・ザ・ディスコ・キング』でいったんクールダウン。
新曲を挟んでアンコールが始まる。
武道館でも『5年間』のイントロが鳴った瞬間に盛り上がっていた観客がさらにヒート・アップしたのが実感できた。
さらにその後に『君の意志のままに』、『屈折する星くず(ジギー・スターダスト)』とアルバム『ジギー・スターダスト』収録曲3連発で締めくくるってくれたのは観客にとって大きなサプライズだった。
アルバム総評
デヴィッド・ボウイのライブ盤としては、音質と選曲で考えればこれがベスト・アルバムだが、演奏内容はすごく良くも悪くもなくそこそこのクオリティと言ったところか。
以前のような張りつめた緊張感は感じられず、リラックスしてライブを楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。
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