デヴィッド・ボウイ/★ブラック・スター(David Bowie/Blackstar)

David Bowie

2016年1月8日の自らの69歳の誕生日に発表されたデヴィッド・ボウイの遺作となったラストアルバム。

アルバム発表の2日後にボウイはこの世を去り伝説となった。
プロデュースは盟友、トニー・ヴィスコンティ。

  1. ティズ・ア・ピティ・シー・ワズ・ア・ホア
  2. ラザルス
  3. スー(オア・イン・ア・シーズン・オブ・クライム)
  4. ガール・ラヴズ・ミー
  5. ダラー・デイズ
  6. アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ
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遺作であり最後の傑作

派手なカムバックを飾った前作とは大きく異なり、ひたすら内向的で暗いイメージの楽曲が並ぶ。

実験的なフリージャズ的要素もありつつ、ドラムンベースを使ったり過去のアルバム手法からの再利用もあってこれまでのアルバムを聴いてきたファンには実にボウイらしいアルバム。

10年ぶりの復帰作となった前作とは、内容は大きく異なり、決して万人ウケはしないであろうアルバム内容でハナからヒットなどは狙っていない事は明白だ。

だが、内向的で暗いアルバム内容でも決して1人よがりではなく、客観性を持って自らの音楽を創り上げているのがボウイのすごいところでちゃんとツボを押さえてポップな部分も残されている。

それはボウイらしさでもあり、不安的な曲調とメロディーにも関わらず迷いを一切感じさせないのが凄みを感じる。

今考えると全7曲というボリュームは、おそらくそこまでしか製作するエネルギーも時間も無かったのだと思われる。

迷いがないのは迷っている時間なんかなかったからなんだろう。

★を紐解く過去のアルバム

まずジャズ的要素が大きくサックスがフューチャーされているので、ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ と少し似通った要素もある。

暗さと前衛性という意味ではアウトサイドとも雰囲気が似ている。
そしてベルリン時代のロウヒーローズ にも似た切迫感と退廃的な雰囲気と鋭さもある。

死後にクイーンとの共演だったりでデヴィッド・ボウイに興味をもった若いファンは、この『★ブラック・スター(Blackstar)』を聴いていきなり受け入れられるのはかなり少数派だろう。

特に普段J-POPしか聴かないリスナーにとっては全く理解出来ない内容かも知れない。

そんな時は、デヴィッド・ボウイ/ナッシング・ハズ・チェンジド オールタイム・グレイテスト・ヒッツを聴いてみて自分の気に入った曲が収録されているアルバムを選んで聴いてみるのも良いかも。

どうか本アルバムだけでデヴィッド・ボウイ=暗くて訳分からん音楽をやっている人と評価するのは出来ればやめて頂きたい。

デヴィッド・ボウイとスター

もともと宇宙的なものに関心があった人らしく、デヴィッド・ボウイの曲のタイトルにはスターと付くタイトルがかなり多い。
思いつくだけでも『ザ・スターズ』ザ・ネクスト・デイ収録、 『プリティエスト・スター』アラジン・セイン 収録、『ニュー・キラー・スター』リアリティ 収録、アルバムタイトルにもなっている『ジギー・スターダスト』そして『レディ・スターダスト』そのものずばりの『スター』ジギー・スターダスト収録などがある。

そして今回のアルバムタイトルが『★ブラック・スター(Blackstar)』。
☆じゃなく★ってところがやっぱり狙って付けたとしか思えないタイトルだった。

アルバム総評

2000年以降アルバムに対する年齢の割には頑張ってるよね的な評価ではなく、今回は現役のアーティストとして評価出来る内容になっている。
アルバムを牽引するのは、若手のジャズ・ミュージシャン達。

特にドラムのマーク・ジュリアナの打ち込みビートと聴き間違うほどの超人的なプレイは、このアルバムのサウンドを強烈に印象付けている。

そんな個性的なバンドメンバーを従えて本作でのボウイは、制御された狂気と達観したような落ち着きを持ち合わせている。
70歳を目前にしてボウイはついに悟りの境地にたどり着いたのだろうか。

そう思った矢先の2016年1月10日にデヴィッド・ボウイはこの世の人ではなくなってしまった。
もういくら待ってもボウイの新作が発表される事はもうない。

あの鼻に掛かった歌声も聴く事も出来ないし、突然の発表で驚かされたりする事もない。

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによるとアルバム制作から新曲『ラザルス-Lazarus』のPV後半でダンスしながらクローゼットの中に隠れて行くシーンまで、すべてが入念に制作されたボウイからの世界への訣別の挨拶だったという。

歌詞には

「見上げてごらん、僕は天国にいる!」という言葉で始まり、「僕は自由だ。ちょうど青い鳥のようにね。僕らしいだろう?」

という言葉もある。
だとしたら自らの死期を悟り、それすらも作品に昇華してしまう天性のアーティスト性は見事というしかない。

50年以上のキャリアを積み重ねた孤高の天才の足跡は、このアルバムで幕を閉じたのだった。

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