ザ・スミスのデビューから2ndアルバムの間の1983年~1984年夏までに発表されたBBCラジオセッションを中心とした編集盤。
実質的に初期ザ・スミスのベスト盤的な内容になっている。
- ウィリアム
- ホワット・ディファレンス・ダズ・イット・メイク?
- ジーズ・シングス・テイク・タイム
- ジス・チャーミング・マン
- ハウ・スーン・イズ・ナウ?
- ハンサム・デヴィル
- ハンド・イン・グローヴ
- スティル・イル
- ヘヴン・ノウズ
- ジス・ナイト・ハズ・オープンド・マイ・アイズ
- ユーヴ・ゴット・エヴリシング・ナウ
- アクセプト・ユアセルフ
- ガール・アフレイド
- バック・トゥ・ジ・オールド・ハウス
- リール・アラウンド・ザ・ファウンティン
- プリーズ・プリーズ
デビューアルバムから録り直し+シングル曲
ファーストアルバムのあまりにも冷静過ぎた演奏が一部ファンから不評だったザ・スミスは、BBCラジオのジョン・ピール・セッションとデヴィッド・ジェンセン・ショーで放送されたセッションとシングルのB面をアルバムにしてしまうというひとつの賭けにでた。
その結果、日本語で『帽子いっぱいの空虚さ』という意味の『ハットフル・オブ・ホロウ』と名付けられた本作は、ファーストアルバムの欠点を補って余りある躍動感と力強さのあるザ・スミスを代表するアルバムとなった。
収録曲の内訳は、デビュー・シングルの『ハンド・イン・グローヴ』、12インチ4thシングルから『ヘヴン・ノウズ』と『ガール・アフレイド』12インチ5thシングルから『ウィリアム』『ハウ・スーン・イズ・ナウ?』、『プリーズ・プリーズ』、デヴィッド・ジェンセン・ショーからは『ジーズ・シングス・テイク・タイム』、『ユーヴ・ゴット・エヴリシング・ナウ』、『アクセプト・ユアセルフ』の3曲、その他の収録曲がジョン・ピール・セッションからの音源となっている。
1曲目アルバム未収録『ウイリアム』から1stにはなかったスピード感がある。
この曲はたった2分9秒でワンコーラスとサビの繰り返しであっという間に終わってしまう。
つまりほとんどのポップソングにはあるはずの2番が存在しないのだ。
『ヘヴン・ノウズ』は、マイクが病気でライブが中止になり、モリッシーとマーがホテルで一気に書き上げた曲。しかしマーはアレンジ等が気に入っていないそうで嫌いじゃないがもっと良い曲があると語っている。
84年といえばMTV全盛の時代なのに、こんなテレビ向けでない『ウイリアム』を1曲目に持ってきただけでも十分挑戦的なザ・スミスというバンドの意図が感じることができる。
デビューアルバム『ザ・スミス』と収録曲のダブリが7曲もあるが、そのどれもがドラムが強調された勢いのある演奏のニュー・バージョンとなっているあたり、メンバーのデビュー作への不満がうかがえる。
さらにモリッシーのヴォーカルも硬さがとれてなめらかになっている。
ただ『ディス・チャーミング・マン』だけは、イントロの印象的なジョニー・マーのギターフレーズがカットされてしまっているのでファーストのほうが印象的でカッコよく聴こえる。
曲が短いおかげでアルバム(当時のLP)で16曲も収録されているっていうのも良かった。
しかし、すでに考えようによっちゃお蔵入りするような音源だからいまだにCDで16曲ってのも、ちとさびしい気がする。
なんかアウトテイクでもないんでしょうかBBCさん。
ザ・スミスの音楽は大人になったら卒業する音楽だという人もいる。
だけどそれはあまりにもモリッシーの詞に重点を置きすぎてはないだろうか?
実際私は歌詞カードなんてほとんどパラッとしか見ないしモリッシーの歌詞はそれほど好きというほどでもない。
以前もどこかで書いたけど英語ができなくて良かったと思うのは歌詞に惑わされずにその音楽の本来の良さがわかるってこと。
歌詞に意味を求めねければザ・スミスの音楽はいつ聴いても美しいままだった。(リアルタイムで聴いてないんだけど)
アルバム総評
スタジオ・アルバムとしてレコーディングされた2枚目のアルバムでもなく、かと言ってライブ盤でもなく、シングル・コレクションでもない。そのすべての要素が合わさった特殊な位置付けのアルバム。
また『ハンサム・デヴィル』と『アクセプト・ユアセルフ』の2曲は、この『ハットフル・オブ・ホロウ』にしか収録されていない。
【アルバムデータ】
- リリース 1984年
- チャート 全英7位
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