スマパンことスマッシング・パンプキンズの1991年にリリースされたデビューアルバム。
確かな演奏力による緩急の効いた力強いリズムとサイケデリックなアレンジ、ビリー・コーガンのヴォーカルも含めてすでにバンドスタイルは出来上がっている。
タイトルの『ギッシュ』の由来はアメリカ女優のリリアン・ギッシュから。
- I Am One
- Siva
- Rhinoceros
- Bury Me
- Crush
- Suffer
- Snail
- Tristessa
- Window Paine
- Daydream
あまりに過小評価されたデビューアルバム
スマパンがデビューしたのは1991年5月だったので実はメジャー・デビューはオルタナティブ・ロックブームの時期によく比較された4か月後にリリースされたニルヴァーナの『ネヴァー・マインド』よりも早かったのだ。
当時、まだ80年代後半のハードロックブームの余波が残っていて、このバンドも音楽雑誌によっては、そっちのカテゴリーに分類されていたのを見た記憶がある。
しかし、シカゴで結成された4人組スマッシング・パンプキンズのデビューアルバムである『ギッシュ』は、80年代の商業ハード・ロックとは全く違う方向性を示してくれた。
ほぼ一人で作詞作曲をこなすフロントマンのビリー・コーガンを中心に、凄まじいスピードとパワーで圧倒するドラムスのジミー、もう一人のギタリストで日系人だけど日本語が喋れないジェイムス、音楽的にはほとんど役に立ってないが、メンバーの潤滑油的役割の金髪美女ベーシスト、ダーシーと言う、実に妙なメンバー構成。
ギターは、ビリーがシャープで固い音質のストラトでジェイムスが太くやわらかい音質のレスポールと使い分けている。
オープニングを飾る『アイ・アム・ワン(I am One)』のダンス・ミュージックを連想させるイントロのドラミングから開放弦を交えたシタールっぽいギター・リフが乗る、それまでの重たいだけのハード・ロックとはまったく異質な洗練された踊れるビートがスタートする。
通常のハードロックのギターリフで開放弦を使う場合、低音弦の単音でひたすら重く刻むのに対して、高音の開放弦の入ったテンションコードを使っているのがユニークかつ斬新だった。
2曲目『シヴァ(Siva)』のギターソロでは、普通に3度でハモってたりする基本に忠実な部分もあるが、注目は後半のゆっくりと静かになる『引き』のパート。
速いリフで押していったん引いてクール・ダウンさせて、また盛り上げる緩急で構成されるスマパンの曲作りのパターンがすでに完成している。
ひたすら重いだけでゴリゴリのヘビメタ全盛のこの時期にこんな曲を作れるビリー・コーガンはやっぱりタダモノじゃない。
『ライノセラス』の静と動のメリハリ、『ベリー・ミー(Bury Me)』のハードロックのようでいて、プログレのようでもある緩急のある複雑な展開や後半の印象に残るギター・リフとソロ、徐々に盛り上げていく巧みなコード進行などスマパンらしさが随所にあり、デビュー作ですでにビリー・コーガンの才能は開花している。
『Window Paine』の引きずるようなリズムに開放弦を交えた何となくインドっぽいコード展開も面白い。
アルバムを通してギターのフィード・バック・ノイズを完全にコントロールして楽曲に取り入れているのが素晴らしい。
散々好き勝手に暴れておいて最後にダーシーがメインヴォーカルのあっさりとしたアコースティック曲の『Daydream』で締める構成も良かった。
やっぱりこのバンドにはダーシーって必要な存在だったんだよな・・・
ただこの頃のスマパンは不遇の時期で時代の先を行き過ぎてたようで当時の来日公演はガラガラだったそうだ。
どうでもいいけどこの頃は長髪だったんだよなーあぁビリー・゚・(ノД`)・゚・。
アルバム総評
80年代後半の産業ロックに引導を渡した衝撃のアルバム。
しかし、ハード・ロックにダンス・ビートを取り入れプログレとヒーリング・ミュージック?まで取り入れたような音楽性は当時の流行とかけ離れていて、あまりに斬新だった為に評価されるには少し時間が掛かってしまった。
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