ケイト・ブッシュの82年発表の4thアルバム。
当時としては異例の72トラックによるレコーディング、セルフプロデュースによる15ヶ月の製作期間をかけて製作された執念の力作。
- サット・イン・ユア・ラップ
- 10ポンド紙幣が1枚
- ピンを引き抜け
- ガッファにて
- リーヴ・イット・オープン
- ドリーミング
- 夜舞うつばめ
- オール・ザ・ラヴ
- フーディニ
- 狂気の家
執念と情念が作り上げた頂点
人によってはデビュー作である『天使と小悪魔 』の頃のケイト・ブッシュが一番好きという人も結構多いと思うけど、やはりケイト・ブッシュのキャリアを代表するアルバムは、この4枚目の『ドリーミング』ではないだろうか。
デビューからロックとクラシックとアイリッシュ民謡を融合した独自の路線をケイト・ブッシュは歩いていたが、この『ドリーミング』の発表によってその孤高の天才の地位は揺るぎない物となった。
ケイト・ブッシュのアルバムはどれもハズレがないが、『ドリーミング』は他のどのアルバムよりもテンションが高く狂気を感じさせるアルバムだ。
それでいてセルフ・プロデュースにも関わらず完成度もおそろしく高いモンスターアルバムだ。
このジャケットのケイト・ブッシュ自身がキーをくわえた写真だけでもアルバムのテンションの高さと狂気と物語性を感じる。
ダウンロード配信だけの時代になったらこんな素晴らしいジャケットアートもなくなってしまうんだろうか?
ケイト・ブッシュのヴォーカルは初期の素直なハイトーンボイスは抑え気味で時おりわざわざ崩してシャウトしたりして変化をつけている。
1曲目『サット・イン・ユア・ラップ』が始まったとたんケイト・ブッシュワールドに引き込まれるのは変わりないけどメルヘン少女だった『嵐が丘』の頃よりももっとドロドロした妖気っぽい情念を感じる。
ベスト・トラックは、『ガッファにて(Suspended in Gaffa)』。
ケイト・ブッシュ以外には創り出せない世界観とストーリー性がここにはある。
タイトル曲である『ドリーミング』は、一切コマーシャルな面がなくお経のようにも祈祷を唱えているように聴こえる。
この曲のラストの鳥の羽ばたくサウンドがヘッドフォンで聴くとかなり凝っているのが分かる。
3年前のけがれのないケイトの姿はここにはない。
ケイト・ブッシュのキャリアでベストと言えるアルバム
ピアノの一音からドラムの各パートのひとつひとつまで非常に丁寧にレコーディングされたサウンドにケイト・ブッシュ自身の変幻自在なヴォーカルが繊細かつ狂気の世界を創り出す。
初期の頃の幻想的な世界観に加えて、精神世界も感じさせる。
私はケイト・ブッシュの全アルバムを聴いたが、本作がベストと言える。
ケイト・ブッシュは、この『ドリーミング』におそらくすべてのエネルギーをそそぎこみすぎたのだろう。
このアルバムを発表後にしばらく休養期間(入院?)があったのもなんとなく納得出来る。
最良の音質でぜひヘッドフォンで聴いてほしいアルバム。
- リリース 1982年
- プロデュース ケイト・ブッシュ
- チャート英 3位
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