フェイ・ウォンの2001年に発売された日本向けに編集されたベスト盤。
香港時代からのシングルを中心に広東語と北京語を交えた収録曲はかなりバラエティに富んでバランスが良い。
- 夢中人(広東語)
- 背影(広東語)
- 黄昏(北京語)
- この風,この空,この思い(広東語)
- 天空(北京語)
- 誓言(北京語)
- 流星(劉以達(タッツ・ラウ)アルバム・ヴァージョン/北京語)
- 漂い(広東語)
- 夢遊(広東語)
- いらいらする(北京語)
- 流れるは飛ぶに非ず(広東語)
- 曖昧(広東語)
- 愛は永遠に(北京語)
- チェス(北京語)
- 悔やまぬ心で(北京語)
- 傷つきやすい女(広東語)
- 思い出それは赤い空(広東語)
- 私の願い(北京語)
アジアン・ポップスの夜明け
90年代半ばの頃、深夜にユースケ・サンタマリアが司会をしていた『アジアン・ビート』って番組でPVが紹介されてからフェイ・ウォンは気になる存在だった。
それ以前のアジアのポップスと言えば、とにかくダサいというイメージだったが、フェイ・ウォンが登場してからはイメージが一新してしまった。
その後には日本でもドラマ出演やらゲーム、ファイナル・ファンタジー8の主題歌を歌ったりして、あそこまで有名になるとは当時まるで思ってもいなかったが。
アルバム・タイトルである『夢中人』は、クランベリーズの『ドリームス』のカバーでイントロが始まってもどっちのバージョンかわからないほどアレンジも奇跡の歌声と呼ばれたドロレス・オリオーダン歌いかたも完コピの仕上がり。
それにしても広東語で歌うとかなり違うイメージになるもんだ。
完全に『夢中人』に関してはフェイ・フォン自身の楽曲になっている。
『天空』は、アジア的な曲調だがスケールの大きさと洗練されたアレンジでアジア音楽ファン以外にも十分にアピールできる楽曲。
『夢遊』は、『夢中人』と同じくクランベリーズ等の欧米のロック・ポップスの影響を感じさせるが広東語で歌っているのがアクセントになっている。
『流れるは飛ぶに非ず』は、日本で有名になるきっかけとなった曲.
元ネタはおそらくビョークが在籍した事で知られるアイスランドのバンド、シュガー・キューブスの『ヴァイタミン』という曲だろう。
フェイ・ウォンは後期になると、この手の欧米のポップスっぽい楽曲を歌わなくなってくるのでこの時期ならではの魅力がある。
『傷つきやすい女』は、中島みゆきの『ルージュ』の広東語によるカバー曲。
このカバーを聴くと、中島みゆきって実にアジアっぽいメロディーの曲だったんだなと気付く。まったく何の違和感も感じない見事なカバーになっている。
後半からラストの『私の願い』までは、アジアン・ポップスらしい、しっとりと聴かせる楽曲が並んでいる。
アジア的な湿ったメロディーとオーケストラ・アレンジの融合が新しいアジアン・ポップスの可能性を感じさせる。
アルバム総評
やはりフェイ・ウォンといえば最大のヒット曲である『Eyes On Me』だが、『夢中人~グレイテスト・ヒッツ』はそれ以前のリリースなので収録されていない。
しかし、逆に『Eyes On Me』なしだからこそ分かる初期の魅力が詰まったこのアルバムは聴く価値があるように思える。
それでも『Eyes On Me』が収録されてなきゃヤダって人には『チャン・ヨウ (歌あそび) スペシャル・エディション』をおすすめする。
ベテランになってからのフェイ・ウォンは、アジアの大物歌手として女王然とした雰囲気を漂わせ、スローな曲中心で落ち着いた感があるが、初期の実験性もある試行錯誤の歴史が分かるベスト盤となっている。
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