元ドクター・フィールグッドの初代ギタリスト、ウィルコ・ジョンソンが80年にリリースしたソロ名義第1弾アルバム。(日本盤は87年)
ブルースを源流としながらも情念を感じさせないカッティング主体のまったく違った角度からのギタープレイのアプローチは、いま聴いても十分インパクトがありエキサイティング。
- ボトル・アップ・アンド・ゴー
- カイロ・ブルース
- ダウン・バイ・ザ・ウォーターサイド
- アイス・オン・ザ・モーターウェイ
- 窓からはい出せ
- リーヴ・マイ・ウーマン・アローン
- ホエン・アイム・ゴーン
- オール・ライト
- キープ・イット・アウト・オブ・サイツ
- ロング・トール・テキサン
- ザ・フーミィ
ソロデビューアルバムにして最高傑作
やっぱりドクター・フィールグッドは、初代ギタリストのウィルコ・ジョンソンがいた頃が一番カッコ良かった。
あの独特のカクカクした動きにピックを持たずに指でかき鳴らす歯切れの良いカッティング・ギターの魅力はウィルコ・ジョンソンならではのものだ。
ドクター・フィールグッド脱退の理由はハッキリとはしていないが、どうやら酒癖の悪いリー・ブリローと酒の飲めないウィルコ・ジョンソンの間ではもともと隔たりがあったようだ。
そのドクター・フィールグッド脱退後にウィルコ・ジョンソンがソロになって発表した初のアルバムがこの『アイス・オンザ・モーターウェイ(Ice On The Motorway)』だ。
収録曲の構成は、どれも非常にシンプルで3コードのブルースを原型としているのがわかる。
しかし、ウィルコのギタープレイは、ひたすらカッティング、カッティングでリズミカルに刻み、ブルースの持つ悲しみや情念よりもダンス・ミュージックにも通じる16ビートを強調した踊れるギター・スタイルだった。
この辺はギャング・オブ・フォーのギタリストのアンディ・ギルにもかなりの影響を与えたようだが、ギャング・オブ・フォーの再評価はあってもその師匠格のウィルコ・ジョンソンにまで注目がなかなか行かないのが非常に残念でならない。
テレキャスターで16ビートのカッティングと言えば日本が誇るギタリストである布袋寅泰にも多大な影響を与えた存在だというのも忘れてはいけないだろう。
音質はその前のバンド名義で発表されたミニアルバムの『プル・ザ・カヴァー』よりもクリアでこもっていないので聴きやすい。
オープニングの『ボトル・アップ・アンド・ゴー(Bottle Up & Go)』から実に爽快に飛ばしてくれる。
ライブでも定番だったノリの良い曲だが、間奏でもカッティングのみでギター・ソロはなく、たった1分40秒で終わってしまうのが実にウィルコ・ジョンソンらしい。
続く『カイロ・ブルース』もライブの定番曲で代表曲のひとつと言って良いだろう。
タイトルのとおりブルースを基調とした楽曲だが、従来のブルースとは違いカラっと明るく軽快な曲だ。
さらに『ダウン・バイ・ザ・ウォーターサイド(Down By The Waterside)』もライブの定番曲だし、考えてみたらこの『アイス・オンザ・モーターウェイ』というアルバム自体がウィルコの代表作でもある訳だ。
タイトル曲『アイス・オン・ザ・モーターウェイ』は、シャッフル・ビートに乗ってファンキーなオルガンとこれでもかというくらいのカッティング・ギターが絡む名曲。
アルバム総評
演奏も前作よりもさらにタイトでシャープに研ぎ澄まされている。
元々ギタリストであるウィルコ・ジョンソンのヴォーカルは不安定で心もとない。
でもあのカッティングギターにはあの声が一番合っているような気がする。
地味に何度も来日してくれて親日家でもあったウィルコ・ジョンソンが再評価されCD再発が待たれる。
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