『呪々』は、一般的にスージー&バンシーズの最高傑作とされる4thアルバム。
バンドのもともと持っていた呪術的なイメージをこの時期のギタリストのジョン・マクガフの演奏が的確に表現して具体化したポストパンクの名盤。
- 呪縛
- イントゥ・ザ・ライト
- アラビアン・ナイト
- ハロウィーン
- モニター
- ナイト・シフト
- 罪深き心
- ヘッド・カット
- ヴードゥー・ドリー
- 呪縛(12インチ・ミックス)
- アラビアン・ナイト(12インチ・ヴォコーダー・ミックス)
- ファイアワークス(12インチ・ナイジェル・グレイ・ミックス)
ギタリストを固定化してサウンドが充実
デビュー以来スージー&バンシーズは、ギタリストが常に流動的で固定できなかったためメンバー交代ごとにサウンドのイメージを変えざるを得なかったが、ジョン・マクガフが一応の固定メンバーとして在籍していたこの時期は、バンドにとって最もサウンドが充実して安定していた時期だった。
ギタリストのジョン・マクガフによる浮遊感のある個性的なコード進行、アルペジオやカッティングを駆使したリフと、スージー&バンシーズの持つダークで退廃的なイメージとが見事にハマったのがこのアルバム『呪々』だった。
初っ端の『呪縛(Spellbound)』からは、これまでのアルバムにない疾走感とバンドとしての一体感を感じる。
『イントゥ・ザ・ライト』や『アラビアン・ナイト』でのアフリカの祈祷を思わせるリズムはデビュー当時から使っていたが、それを曲として具体化できるギタリストはこれまでいなかった。
それがマグガフは開放弦を交えたアルペジオと高音のカッティングを中心とした演奏で見事に表現して曲として完成させている。
『ハロウィーン』の金属的なギターサウンドと浮遊感のあるコード進行、躍動感のあるベースラインの対比が独自の緊張感のある音楽性を生み出しており、この時期のスージー&バンシーズは完全に勢いだけのパンク出身バンドの殻を破っているのが実感できる。
次の『モニター』もマクガフの回転する車輪のようなギターリフを中心に曲が構成されていてカッチリ決まっている。
このバンドの魅力のひとつにマニアックな音楽をやっているのに踊れるポップな曲があるっていうのがあるが、これらの曲はその代表と言えるだろう。
アルバム総評
タイトルとジャケットで伝わるイメージは一貫して呪術的、退廃的な音楽だが、スージー・スーのヴォーカルはかつてのように叫びではなく低音を中心に抑えたものとなっているがそれがマクガフのギター、民族音楽的なリズム等と見事に調和している。
スージー&バンシーズの最高傑作と言えるかは別にしても代表作であるのは間違いないだろう。
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