デイジー・チェインソー(Daisy Chainsaw)は、その後クイーン・アドリーナ(Queen Adreena)として活動するケイティ・ジェーン・ガーサイド(Vo)とクリスピン・グレイ(Gt)の所属していた90年代のオルタナティブ・パンクバンド。
このデビューアルバム、『イレヴン・ティーン』は、初代ヴォーカルのケイティ在籍時に発表された唯一のアルバムだった。全英62位。
- I Feel Insane
- You Be My Friend
- Dog With Sharper Teeth
- Hope Your Dreams Come True
- Natural Man
- Love Your Money
- Lovely Ugly Brutal World
- Use Me Use You
- Future Free
- Pink Flower
- Waiting for the Wolves
- Everything Is Weird
デビューアルバムであり90年代UKグランジの名盤
90年代前半のロック界ではグランジ、オルタナティブの一大ブームがあったが、これがおそらく最後のロックムーブメントではなかっただろうか。
現代ではロックに限らず、新しいサウンドはすでに出尽した感があり、ひとつの音楽ジャンルが流行ることはなくなってしまった。
その最後のロック・ムーヴメントで最も成功したのがニルヴァーナだったりスマパンだったりする訳だけど、当時は他にも面白いバンドはたくさんあった。
しかし、その大半は発信地のアメリカ産のバンドであり、この時期のイギリスのバンドはあまりパッとしなかった。
その中にあって短期間にマグネシウムリボンの如く一瞬だけ眩しく輝いたバンドがこのイギリス出身のデイジー・チェインソーだった。
シングル『Love Your Money』でインディーズの注目の的となり、マドンナのマーベリックレコード・レーベルとの契約の申し出を断り、後にインディーズ レーベル、ワンリトル インディアンと契約してデビュー。
91年のデビューからデイジー・チェインソーは本国のインディーズ・チャートでは、シングルを出せば毎回1位を取るほど人気だったが、日本でも一部だけにかなり熱狂的に迎えられた。
デイジー・チェインソーのノイジーでテンションの高いサウンドはまさしくオルタナティブで時代を象徴する物だったが、やはりこのバンドはヴォーカルのケイティの存在感に尽きる。
かわいらしい顔で小柄だけど、ライブのテンションは異常なまでに高くて凄まじかった。
このアルバムにはそのテンションの高さが詰まっている。
そのサウンドは英国ロックの先輩であるセックス・ピストルズやスージー&バンシーズの影響も感じられ、ケイティの歌い方はどこかドイツ出身の歌手、ニナ・ハーゲンに似たエキセントリックさもあった。
バンド演奏はラウドでヘヴィーだが、クリスピン・グレイのギターはハードロックやメタルのように尖ったサウンドではなく、レスポール特有の丸くやわらい音色だった。
曲調はエキセントリックでノイズに近いものからアコースティックまで幅広く、時にはかなりポップでさえある。
2ndシングル、『Pink Flower』では、よりノイジーにクリスピンのギターが暴れまわっている。
普段着でどこか汚らしい(グランジ)ファッションをしていたアメリカのオルタナバンドと比べてお洒落に着飾っていたデイジー・チェインソーは、ファッションセンスも含めて洗練された90年代版のグラム・ロックとパンクロックの融合バンドと言った印象だった。
日本でのライブの様子
『イレヴン・ティーン』を聴いてどうしてもデイジー・チェインシーのライブを観たくなった当時19歳の私は彼らが日本でツアーすると知って即チケットを予約した。
ライブ開始前には、「ステージ演出上、牛乳や血しぶきを撒くので掛かりたくない人は後ろに下がっていて下さい」みたいなことをアナウンスされていた。
メンバーがステージに登場すると、いきなりケイティがヅラを取って坊主頭で歌い出す。それだけでインパクト充分だった。
バンドの演奏は意外にうまかったけどケイティのテンションが高すぎて、ほとんどまともに歌えていないし、3曲目くらいから早くもバテてしまっているようだった。
ライブ自体も30分ほどで終了してしまったが、この時のライブ演奏は、たくさん観た音楽ライブの中でも最もテンションが高く、印象に残っているものだった。(あまりに凄まじかったので客の大半が引いてしまっていた)
音楽のライブというよりは、黒ミサとか祈祷の儀式みたいだった。
このバンドは一部の熱狂的なファンに支持されていたが、毎回命を削るようなテンションのやたら高いライブが長く続けられるはずもなく、ツアー終了後に疲れきったケイティが脱退、その後にバンドは代役のヴォーカルのベリンダ・リースを加入させるがバンドは尻つぼみになってしまうのであった。
活動期間は短くでも影響力は大
3曲のシングルのうち『Love Your Money』の全英26位が最高でセールス的には振るわなかったが、 デイジー・チェインソーが後続のバンドに与えた影響は非常に大きく、暴力的でありながらどこかユーモラスでかわいらしくもあるサウンドイメージ、弱さをごまかすためのトゲトゲしいメッセージ性、サウンドの真逆のケイティのファッション性などが受け継がれていったのだった。
余談だがデイジー・チェインソーが解散したその数年後、ジュディ&マリーがデビューした時に、ファッションや音楽性からこのバンドのテイストを感じ取った。
たまたま深夜にYUKIのオールナイトニッポンを聴いていたら「メンバー全員このバンドが好きなの」みたいな発言をしてデイジー・チェインソーの曲を放送で流していた(AMラジオでこの手のバンドがかかることは滅多にない)ので、あーやっぱりと思ってちょっと嬉しくなった。
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コメント
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楽しく、懐かしく読ませていただきました^^
当時、このアルバムとスウェードの1stアルバムだけで
毎日夢見心地でした~^^
ケイティとクリスピン、
現在でもクイーンアドリ-ナで頑張ってますよね~
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ありがとうございます。
あの2人が新しくバンドを作ったと聞いた時はやっぱり嬉しかったし当時の事を想いだして懐かしい気持ちになりました。