デヴィッド・ボウイ/ロジャー(David Bowie/Lodger)

David Bowie

ロジャー』は、デヴィッド・ボウイのベルリン三部作の最終作として位置するアルバム。

とは言え実際のレコーディングはベルリンのハンザ・スタジオを離れ、スイスのマウンテン・スタジオで行なわれた。

収録曲は、インストなしのエスニックなポップ路線で張り詰めた緊張感はなく、リラックスした内容の為に『ロウ』、『ヒーローズ』とはかなり趣の異なった作品となっている。

全英4位、全米20位。

  1. 素晴しき航海
  2. アフリカン・ナイト・フライト
  3. ムーヴ・オン
  4. ヤサシン(長寿)
  5. レッド・セイル
  6. D.J.
  7. 怒りをこめてふり返れ
  8. ボーイズ・キープ・スウィンギング
  9. レピティション
  10. レッド・マネー
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前2作とは明らかな違い

これは、すでにベルリンにもイーノとの共作にもボウイ自身が「飽きて」きてしまってきた事を物語っているのではないだろうか。

ロジャーでは、ヒーローズまでのギリギリまでに言葉を切り詰めた緊張感のある小難しいインストナンバーは姿を消して「詞」が復活したのが一番変化した点と言える。

イーノの発表したアンビエント作品よりも彼が同時期にプロデュースしていたトーキングヘッズの音楽性に近い。
アルバム全体的にエスニック、民族音楽の影響が見られるが、それが明確なコンセプトと言うわけでもなく、あわただしく落ち着きのない印象をロジャーから受けてしまう。

しかし「あわただしく落ち着きのない」というのはボウイ自身の特徴だから好意的に見れば実にボウイらしい作品とも言える。

シングル曲

ロジャーの中心となるのはシングルカットされた『DJ』『怒りをこめて振り返れ』『ボーイ・キープ・スウィンギング』の3曲だ。

この時代(70年代後半)としてはめずらしく全てのシングルでPVを撮っているのはさすがに先見の明がある。

D.J.

D.Jとは、ディスクジョッキー(Disc Jockey)の意味以外にもボウイの本名であるデヴィッド・ジョーンズ(David Jones)のイニシャルでもある。

PVでの街に出てファンに抱きつかれたり、キスされても無表情で通り過ぎる姿はボウイ自身の当時の心情の表れなのだろうか。

David Bowie - DJ (Official Video)

ボーイ・キープ・スウィンギング

何といっても強力なのは「ボーイ・キープ・スウィンギング」ではないだろうか。

演奏はレコーディング中にボウイの思いつきでバンドメンバーの楽器パートを入れ替えた。
これはボウイがプロデュースした1977年に発表したイギー・ポップの『ラスト・フォー・ライフ』のレコーディング中にやった手法を自らのレコーディングに再度取り入れたものだった。

ギターのカルロス・アロマーにドラムをドラムのデニス・デイヴィスにベースを弾かせたりと「取替えっこ」して行なわれた為にどこか直線的でアマチュアっぽいビートになり不思議な推進力が生まれている。

ボウイいわく、バンドメンバーは「始めて楽器を手にした少年達みたいだった」との事。

ロバート・フリップの替わりに参加したエイドリアン・ブリューの後半のギターソロが盛り上げる曲そのものも3曲の中で一番ヒットした(英7位)、このPVの3人の女性コーラス隊はすべてボウイ自身が女装して演じている。

知らずに観たレコード会社のスタッフは最初ボウイだと気づかなかったらしい。
個人的にコーラス真ん中のボウイは結構かわいいかも・・・と思ってしまった。

David Bowie - Boys Keep Swinging (Official Video)

このボーイ・キープ・スウィンギングのPVによって相変わらずボウイは『何かやらかす』存在だと印象づけるのに成功した。

怒りをこめてふり返れ(Look Back in Anger)

シングル3曲の中で最も平凡な出来でヒットもしなかったが、以降のツアーのオープニング・ナンバーとして何度か演奏されていた。

David Bowie - Look Back In Anger (Official Video)

他にも『すべての若き野郎ども』のテープを逆再生して出来た手抜き曲『ムーブ・オン』、ボウイ初?のレゲエ曲『ヤサイン』等、その後のライブでもほとんどやらないめずらしい曲が収録されている。

ラストの『レッド・マネー』は、イギー・ポップのアルバムに収録された『シスター・ミッドナイト』をアレンジはほぼそのままでタイトルと歌詞を替えた曲。

アルバム総評

ベルリン3部作の締めくくるアルバムとして聴くと肩透かしを食らうが、ロック+エスニック=国籍不明のワールド・ミュージックというコンセプトで聴くとなかなかの出来でシングルも3曲収録されていて悪くないアルバムと言える。

ただ明確なコンセプトがなく、シングル曲を除くと方向性が定まっていない奇妙な楽曲ばかりなので70年代のボウイのアルバムの中では人気はないようだ。

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コメント

  1. いたち野郎 より:

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    先日はコメントありがとうございます。
    「ロジャー」とはまた渋い作品ですね。おっしゃるとおり、全体的にドタバタした印象を受けますが、逆にみればそれが魅力なアルバムだと思います。「ムーヴ・オン」が「すべての若き野郎ども」の逆再生だったとは気づきませんでした。
    こちらでもリンクさせていただきますね!これからもよろしくお願いいたします~!

  2. nasumayo より:

    SECRET: 0
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    リンクありがとうございました。
    ロジャーはあまり好んで聴きませんが落ち着きのない妙な感じが嫌いじゃないですね。
    ヒネクレ者なので他の人があまりレビューしない作品も取り上げたいですね。