スケアリー・モンスターズのレコーディングにはベルリン時代のパートナー、ブライアン・イーノは不参加でスタジオもベルリンから離れ新しいスタートを切った。
ここで何かの「終わり」を感じさせるアルバムであり、RCAとの契約も切れてボウイはその後しばらく充電期間に入ることになる。
- イッツ・ノー・ゲーム (パート1)
- アップ・ザ・ヒル・バックワーズ
- スケアリー・モンスターズ (アンド・スーパー・クリープス)
- アッシュズ・トゥ・アッシュズ
- ファッション
- ティーンエイジ・ワイルドライフ
- スクリーム・ライク・ア・ベイビー
- キングダム・カム
- ビコーズ・ユアー・ヤング
- イッツ・ノー・ゲーム (パート2)
80年代の幕開けとカルトスターの終焉
ボウイにとってのゴールデン・イヤーズは、RCAとの契約からスタートしているが、この『スケアリー・モンスターズ』ですべての契約は終わり、80年代はスタートした。
このアルバムはボウイが70年代にやり残した仕事の総括のようにも思える。
アルバムのオープニング曲『イッツ・ノー・ゲーム(パート1)』の日本語のナレーションにいきなり驚かされる。
シルエットや影が革命を見ている
もう天国の自由の階段はない
アルバム製作の前年の79年に宝焼酎「純」のCMに出演するために京都を訪れたボウイは、改めて日本からインスピレーションを得て『イッツ・ノー・ゲーム』を作曲した。
当初ボウイは、この曲を日本語で自分で歌おうとしたが、日本語の発音が難しいので断念した。(ボウイの日本語力は、ネヴァー・レット・ミー・ダウン収録の『ガールズ』を聴けば分かる)
そこで日本人女性の※ミチ・ヒロタに日本的なフィーリングを出す為に強く直接的な表現にして欲しいとナレーションを頼んだら文章もアクセントも日本人が聴くと微妙でやたらと芝居がかっていてあやしい感じな仕上がりになった。
でもなんかソコが妙にインパクトがあって良い感じ。
本名は廣田三知。スパークスのキモノ・マイ・ハウスのジャケットの右側に写っている人。
夫であるミュージシャンのジョージ広田は、ボウイのパントマイムの師匠であるリンゼイ・ケイプ劇団のミュージックマスターを担当していた経緯からボウイと知り合い紹介したたようだ。
女優の広田レオナが娘説があったがどうやら別人のようだ。
これは西洋と東洋をクロスオーバーさせるという、いつも作品に取り入れている要素なんだ。
タイトル曲の『スケアリー・モンスターズ』をはじめロバート・フリップの生真面目でエキセントリックなギターが大活躍でこのアルバムのサウンドの重要な核となっており『スケアリー・モンスターズ』の曲はその後のライブのレパートリーになる曲を多く含んでいる。
タイトル曲の『スケアリー・モンスターズ』の詞ではボウイの作品中何度か登場する正体のわからない「怪物」をテーマとしたものでエキセントリックさの中にもファンタジーを感じさせる作風。
彼女は風変わりな扉を開けた
僕達が二度と閉められないその扉を
アルバムの中心となるのは、やはり初のヒット曲となった『スペイス・オディティ』のアンサーソング『アッシュズ・トゥ・アシュズ』でボウイのキャラクターのひとつ宇宙を漂う孤独な英雄「トム少佐」がただのジャンキーだったと言う自虐的な歌詞がファンに衝撃を与えた。
『アッシュズ・トゥ・アシュズ』のPVはその曲の世界を飛び出し芸術性のある独立した作品としても評価されその後のMTVブームを予感させる。(全英1位)
そしてもう1曲の核となるのが『ファッション』で、『フェイム』→『ゴールデン・イヤーズ』→と続く売れ線ディスコ路線。
これは次のアルバム『レッツ・ダンス』でピークを向かえることになる。
『ファッション』のメッセージは80年代よりもインターネットの普及で流行の移り変わりがさらに早くなった現代の方がよりリアリティがあるかも知れない。
マスコミや権威がある有名人の言動がたとえそれがどんなに薄っぺらで意味がないものでもいっせいにリモコンで操られているようにファッションの奴隷になって動いてしまう大衆。
PVでは冒頭のカーロス・アロマーのタバコを吸ったフリに始まり、ボウイのマイクスタンドにマイクがないのに唄ったフリ、ドラムのバスドラがないのに叩いたフリなど全てが誰かに操られてるかの様なやる気のないフリに終止している。
ロバート・フリップによるギタープレイは、かなりスリリングで挑戦的だ。
フリップは、「前代未聞のギター演奏だった。音も外れていたしね」と語る。
前半の『ファッション』までは、流れも曲の出来も素晴らしい。
しかしファンの間で隠れた名曲として知られる『ティーンエイジ・ワイルドライフ』はどうしても『ヒーローズ』の焼き直しに思えて仕方ない。
ザ・フーのピート・タウンゼントが参加した『ビコーズ・ユア・ヤング』、トム・ヴァーライン(テレヴィジョン)のカバー曲の『キングダム・カム』を含めその後の曲も引っかかるものがなくちょっと弱いが、それらもそれほど気にならないほど最後の『イッツ・ノー・ゲーム(パート2)』で締めくくる構成が見事だった。
『スケアリー・モンスターズ』はニューウェーブ全盛の時代に元祖ニューウェーブとして発表した感のある作品で面目躍如の久々の全英1位となった。
アルバム後半の曲がほとんど印象に残らないのは、その後のボウイのスランプを暗示しているような気がしてならない?
「新聞は書き立てるぞぅ!」
「しゃーらっぷ!」
思い切り余談だが、人気コミック、ジョジョの奇妙な冒険で『スケアリー・モンスターズ』って名前が、Dioのスタンドとして登場したのは妙に嬉しかった。
⇒ジョジョの奇妙な冒険と洋楽ロック
- iTunes試聴&ダウンロード
- Scary Monsters (And Super Creeps) [2017 Remastered Version]
Next⇒レッツ・ダンス(1982年)
デヴィッド・ボウイ/スケアリー・モンスターズ収録曲の動画
David Bowie – Ashes To Ashes
Scary Monsters(live)
スケアリーモンスターズ(Shm-cd )盤
デヴィッド・ボウイの80年リリースのアルバム、『スケアリーモンスターズ』の全てのCDプレーヤーで再生可能なShm-cd盤。
ただし新たにリマスターされたわけではなく、今までの音源をそのままにShm-cd化しただけで収録曲も同じ。
ジャケットや帯などはオリジナルのアナログ盤を再現。
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デヴィッド・ボウイのShm-cdシリーズを初めて購入してみた。
今まで何となく気になっていたんだけどわざわざ買うほどでもないとかなってのと何しろ収録曲も音源は変わってないのにShm-cdになっただけで価格が1000円以上高いってどうなのよ!?って感じで。
今回たまたまセールで安く入手したのはデヴィッド・ボウイのRCA時代最後となるアルバム、『スケアリー・モンスターズ』。
ジャケットは最近多い紙ジャケ、嫌いなんだけどここまでオリジナルのアナログ盤を忠実に再現されると発売当時を知らないファンでもちょっと嬉しい。
ジャケ色が白じゃなくてちょっとくすんだクリーム色だったりとかこだわりを感じる。
歌詞の対訳とライナーも旧規格の使いまわし。何だかななぁ。
従来の音源との音質の違い
1曲目の『イッツ・ノー・ゲーム (パート1) 』を聴く。
うーんそういや何だかちょっと音が良いような?正直よくわからない。
やっぱり80年録音だし、元の音源が古すぎたのかな?とか思ったりして。
しかし、曲が進むにつれて何となく音に丸みがあると言うか滑らかで柔らかい印象を受けた。
だがはっきりと「おおっ!さすがShm-cd!」と言えるような劇的な変化はなし。
今回この記事を書く際にShm-cdで検索したら音質が明らかに違うとか書いているメーカーから依頼されたようなちょうちん記事もあったが、あまり違いを感じなかったのが正直なところ。
実は2000年リマスター盤の『スケアリー・モンスターズ』は持ってないんだよね。
なので直接は聴き比べる事が出来ないが、他のボウイのリマスター盤はほとんど持っているので大体の質感はわかっている。
2000年リマスター盤はそれ以前に発売されていたライコ盤と比べると音がかなりデジタルぽくて尖っていてあまり好きじゃなかった。
無理やり違いを探すと今回のShm-cd盤はその2000年リマスター音源を元にしているにもかかわらず、音が滑らかで細かい音まで拾い上げている印象をやや受けたのでやはり違いはあるのかも知れない。
実際にアナログ盤を聴いた事はないけど多分アナログに近い音質なのではないだろうか。
ちなみに見た目は普通のCDと変わらない。
ボウイのShm-cdシリーズは買いか?
オリジナルを再現したジャケットはマニア心をくすぐるし、この音質は従来のリマスター盤よりも柔らかく滑らか。だけど音がいいって言うのとはちょっと違うかも。
しかし、リマスター盤を持っている人がわざわざ2800円出して購入する必要があるかっつーとあんまりないんじゃかいかと。
あくまでもオリジナルに近い(と思われる)ジャケットと音で聴きたいボウイマニア向け。
これで価格が1800円だったら全アルバム集めるのに。
CD発売から30年以上経っているだからレコード会社はこんなのに付加価値つけんでこれが標準装備で売り出さんと。
だからますますCDが売れんのよ。
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