ステイション・トゥ・ステイションと前作ヤング・アメリカンズとの違いはヤング・アメリカンでは黒人になりきろうとしたデヴィッド・ボウイがステイション・トゥ・ステイションでは白人として黒人音楽を取り入れていると言う立ち位置だろう。
それまでデヴィッド・ボウイが培ってきた白人ロックにディスコ・ソウルの要素を取り入れることは当時としては斬新で実験的な試みともいえる。
- ステイション・トゥ・ステイション
- ゴールデン・イヤーズ
- ワード・オン・ア・ウィング
- TVC15 (ワン・ファイヴ)
- ステイ
- 野生の息吹き
ロック+ソウルの融合をいち早く実現
75年当時、すでに深刻なコカイン中毒になっていたボウイだが、アルバム、『ステイション・トゥ・ステイション』に収録された楽曲、歌唱を聴くかぎり全くそれを感じさせない。
全6曲というボリュームは現在の感覚だとミニアルバム扱いになりそうだが、1曲ごとの密度が濃く収録時間も長めなのでさほどは気にならないだろう。
でも現在だったらCDにボーナストラックくらい収録してくれてもいいような気がしてしまうが・・・
タイトル曲『ステイション・トゥ・ステイション』はボウイの曲の中でも最も長い10分を越える大曲でこのアルバムを象徴するロックとソウルの融合させた代表曲のひとつで前半のヘビーで陰鬱な展開から一気にディスコナンバーに変化する個人的にはボウイの中でもベスト5に入るナンバー。
また、1981年のドイツ映画クリスチーネ・Fには、この曲のライブ演奏シーンがほぼまるごと収録されている。
ギターのフィードバックノイズから始まるイントロは、ボウイのアイディアによるもので、レコーディングではギタリストのアール・スリックは壁に積み上げたアンプに向かって延々とフィードバックノイズのみを弾かされたそうな。
いつもは前に出たがりすぎてジャマ臭く感じるアール・スリックのリードギターがここでは大活躍する名演を見せている。
シン・ホワイト・デューク
このタイトル曲である『ステイション・トゥ・ステイション』に登場するシン・ホワイト・デューク(痩せた白い公爵)がジギー・スターダスト以来続いた実質デヴィッド・ボウイ70年代で最後のキャラクターになっている。
見た目は宇宙人でもなければ、半獣でもないオールバックの普通の青白く痩せこけた男、その姿は当時のコカイン中毒だったボウイの姿そのものだった。
その他の曲
同じ誕生日で尊敬するエルヴィス・プレスリーにささげる曲として作ったもののプレスリー側に付き返されたという逸話のある『ゴールデン・イヤーズ』は『フェイム』と同じ系統のディスコ系の曲で『フェイム』よりも出来が良いにもかかわらずジョン・レノンと言うネームバリューがなかったのでNO1にはなれなかった。
3つのパートにわかれたボウイコーラス隊が聴き所。
『TVC15』は、曲としては面白いもののアレンジが未消化のまま収録されている曲でもあり、その後のツアーで練られて研ぎ澄まされていく事になる。
だから『ステイション・トゥ・ステイション』に収録されたその他の楽曲もライブバージョンのほうが洗練されてカッコ良い傾向にある。
ラストを飾る56年の西部劇『野生の息吹』のテーマソングのカバーを含む全曲がその後のツアーの定番曲になっているのがこの時のボウイの調子の良さを象徴している。
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