デヴィッド・ボウイのデビューアルバムではないが、それまでの地味で報われない活動から初めて注目された実質的なデビューアルバム。
スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』にインスパイアされてアポロ月面着陸の中継の際にBBC放送でBGMに起用されたタイトル曲、『スペイス・オディティ』は全英5位のボウイ自身初のヒット曲となっている。
- スペイス・オディティ
- 眩惑された魂
- ドント・シット・ダウン
- ヘルミオーネへの手紙
- シグネット・コミティー
- ジャニーヌ
- おりおりの夢
- フリークラウドから来たワイルドな瞳の少年
- 神は知っている
- フリー・フェスティバルの思い出
タイトル曲が全英5位のヒット
タイトル曲の『スペイス・オディティ』は曲の出だしだけ聴くと普通のフォーク調の曲だが、Dのコードの使い方やメジャーだけで展開する間奏部分の浮遊感のあるコード進行などボウイらしさが散りばめられた宇宙的でちょっと風変わりな心地良い違和感が残るこの曲はボウイソングの原点と言える。
特に変わっていてインパクトがあるのが何の脈絡もなく出てくるハンドトラップ(手拍子)とパワーコードのギターのブレイク。
60年代後半、すでにハードロックなどではこうしたコード進行は当たり前にあったが、フォークっぽい曲に取り入れたのがボウイらしくてユニークな点だろう。
ボウイは当初トニー・ヴィスコンティにプロデュースを依頼したが、ヴィスコンティは曲が狙い過ぎであまりにも安っぽいと拒否、代わりにガス・ダッジョンが担当した。
1969年当時、アポロ11号が月面着陸をする場面に主人公のトム少佐が地球に生還せずに宇宙に漂い続けてしまうこの曲がBGMが起用されたのは英国らしいジョークなのかも知れない。
中継を視聴していた多くの少年、少女の中で本当の宇宙飛行士になったクリス・ハドフィールドが、2013年に実際に宇宙でこの曲をカバーした。
この曲には、スタイロフォン(Stylophone) という子供用の楽器が効果的に使われており、ヒットした事によりボウイ自身がCMに出演するラッキーもあった。
また、この曲の80年にリメイクされたバージョンがライコ盤のスケアリー・モンスターズに収録されていた事もあった。(現在は未収録)
残念ながらアルバムの収録曲で『スペイス・オディティ』に匹敵する曲は見当たらないが『フリークラウドから来たワイルドな瞳の少年』の詞の独特のファンタジーな世界観、ドラマティックな曲調はその後のボウイを予感させる。(このコード進行は後に『すべての若き野郎ども』で流用される)
長年謎に包まれていた元婚約者であるヘリミオーネへの想いを綴った『ヘルミオーネへの手紙』は、ボウイの死後に収録されたドキュメント『最初の5年間』と『最後の5年間』にヘルミオーネ自身がインタビューに答えた事でなぜ別れる事になったのか?等、多くの謎が判明したのだった。
パイプオルガンのイントロが印象的な『フリー・フェスティバルの思い出』は、ミック・ロンソンが参加したバージョンのほうがはるかにパワフルでロック的だが現在発売のCDではカットされて収録されていない。
それにしても同じ曲が、ここまで変わってしまうとはミック・ロンソンのアレンジ力恐るべし!
アートロック的な曲調とゴスペル的なコーラスもロックとソウルを融合させたステイション・トゥ・ステイションの原点をうかがわせる。
アルバム総評
それまでの内向的過ぎたり、とっ散らかっていたボウイの音楽性から間違いなくこの『スペイス・オディティ』から方向性が定まってきているのがわかる。
しかし、まだこの時点ではボブ・ディランくずれの風変わりのフォーク歌手のような印象だったボウイが徐々にジギー・スターダスト へと変身していくのはもう少し時間がかかるのだった。
尚、このアルバムの未発表曲及びデモバージョンはボックスセットのカンヴァセーション・ピースでまとめて聴く事ができる。
Next(1971年)
- iTunes試聴&ダウンロード
- David Bowie (2015 Remastered Version)
- リリース 1969年
- プロデュース トニー・ヴィスコンティ
- チャート 英17位 米16位
コメント
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このアルバムは持ってませんが、「Space Oddity」はたしか日本盤「Scary Monsters」のボーナス・トラックに入っててすごく好きでした。最初っからスペイシーだったんですね。
そういえばロキシー、やっぱりイーノは不参加みたいですね。
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それはやっぱりライコ盤ですね。
今や貴重ですよw
そのバージョンもアレンジがギリギリまで減らした緊張感がいいですね。
ただこの当時とは声も歌い方も全然ちがうので機会があったら聴いてみてください。