変わり者が多かったパンク・ニューウェーブ勢の中でも、より一層異彩を放っていたスージー&ザ・バンシーズのデビューアルバムにシングル『香港庭園(ホンコンガーデン)』をプラスした編集したアルバム。全英チャート最高12位。
アルバム名の『香港庭園』というのは日本独自のタイトルでオリジナルのタイトルは『The Scream』だった。
- ピュアー
- ジグソウ・フィーリング
- オーヴァーグラウンド
- カーカス
- ヘルター・スケルター(あわてふためいて)
- ミラージュ
- メタル・ポストカード
- ニコチン中毒
- サバーバン・リラップス
- スウィッチ
- 香港庭園
- ステアケイス(ミステリー)
同時期のパンクバンドとは一線を画す個性
スージー&ザ・バンシーズの結成時のメンバーは、ヴォーカルのスージー・スーと音楽的リーダー、ベーシストのスティーヴン・セヴェリンを中心にセックス・ピストルズの親衛隊だった若者たちで構成されていた。
初期メンバーにはドラムスとしてあのセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスも在籍していた。(演奏は出来なかったんだろーなー)
レコーディング期間は1週間、ミックスに3週間かけてプロデュースはバンドと共同名義でスティーヴ・リリーホワイトを起用した。
初めてこのアルバム『香港庭園』を聴いた十代の頃、あまりにラフでシンプルな音に嫌気がさしてしばらくほったらかしにしていた。
数ヵ月後に思い直して再度聴いてみたら凄くカッコよく感じたのは、あのセックス・ピストルズの勝手にしやがれ!!とまったく一緒の感覚だった。
たった1週間でレコーディングされたので確かにサウンドは雑だし、デビューアルバムだからテクニックもたいしてないんだけどなんだけど、このスージー&ザ・バンシーズというバンド、本当にセンスを感じる!
デビューシングルでありタイトル曲の『香港庭園(Hong Kong Garden)』は、LP発売当時はアルバム未収録曲でCD化の時に後からオープニングに収録されていたが、リマスター版ではオリジナル盤を尊重して『ピュアー』になっている。
さて曲の構成は現代のJ-POPの常識からするとありえないAメロだけの曲だ。
ただひたすらAメロだけを繰り返し間奏もギターソロはなし、なのにちっとも退屈しないスピード感と躍動感に満ち溢れている。
特に初期のみ参加していたギタリストのジョン・マッケイ(マクガフではなくて)のキレのいい勢いのあるカッティング奏法がアルバム全体を盛り上げている。
変わったところではビートルズの『ヘルター・スケルター』をカバーしている。
もともとぶっ壊れた曲だけどスージー&ザ・バンシーズの手によってさらにぶっ壊れた曲に仕上がっている。
時にはリズムに変拍子を使い、音楽理論を無視したコード進行をしながらも『カーカス』や『ニコチン中毒』(なにこの邦題?)なんかの印象はかなりポップでキャッチーですらある。
アルバム総評
ベースフレーズがリードするリズム、シンバルを使わずにタムを多用するドラムスなど音楽的に斬新な要素が多く含まれており、ポストパンクとしてのちのニューウェーブ、オルタナティブに与えた影響は非常に大きい。
この手の呪術的でダークなイメージのバンドは、とかく独りよがりになりがちだが、演奏はソリッドで音楽性は斬新だったのが何より素晴らしい。
本アルバムで印象的なリフを弾いていたギタリストのジョン・マッケイが初期で脱退してしまったのは非常に残念だった。
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