デヴィッド・ボウイ/ヤング・アメリカンズ(David Bowie/Young Americans)

David Bowie

前作から垣間見れたソウルミュージックへの憧れから聖地フィラデルフィアでレコーディングされたデヴィッド・ボウイのアルバム、『ヤング・アメリカンズ』は1週間で書き上げた曲を当時の腕利きの黒人ミュージシャンを揃えてレコーディングされた。

そこにはもうすでにロック・スターとしてもボウイはいなかった。

  1. ヤング・アメリカンズ
  2. 愛の勝利
  3. ファスシネイション
  4. ライト
  5. 幸運の神
  6. アクロス・ザ・ユニヴァース
  7. 恋のささやき
  8. フェイム
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ロックからソウルに転倒

レコーディングのメンツには、芽が出る前のデイヴィッド・サンボーンやルーサー・ヴァンドロス等ののちにソロで大成功するミュージシャンも含まれていた。

出来上がったアルバムは驚くべき仕上がりになった。

すでにそれはロック・ミュージックではなく、まさしくボウイ自ら評した『プラスティック・ソウル』と呼ぶにふさわしい白人による黒人音楽への憧れを模倣で表現したアルバムだった。

そこには3年前に『ジギー・スターダスト』だったグラムロックスターの男の面影はまるでなかった。

何というフットワークの軽さ! 何という変わり身の早さ!

ルックスも曲調も歌唱方もまるで違う、別人と言っていいほどのボウイの変身ぶりにファンは度肝を抜かれたのだった。

レコーディングでは多くの黒人ミュージシャンを起用したが、従来のフィーリングを重視するスタイルではなくフレーズ毎に細かく指示を出すボウイ流のやり方に彼らはかなり戸惑ったようだ。

シングルになったジェイムス・ブラウンの曲からお手軽にギターリフをパクった『フェイム』はジョン・レノンとの共作で話題性もありボウイ初の全米NO1ヒットとなった。

David Bowie - Fame - Live on the Cher Show – 1975 - Remastered

作曲の際、多くのギターリフの候補からボウイとレノンの話し合いの結果、カーロス・アロマーのリフが選ばれた。
これによってアロマーは、曲のクレジットがボウイ、レノンと並んで3人の共作名義となる栄誉に授かった。

その他にレノンとはビートルズの名曲『アクロス・ザ・ユニヴァース』をレコーディングしている。

David Bowie - Across The Universe (1975)

ジョン・レノンは酔っ払っていてレコーディング当時の事はほとんど覚えていなかったらしいが、ビートルズのカバーをジョン・レノン本人にさせたのはボウイだけだろう。(しかもメインはボウイでレノンはコーラス)

タイトル曲『ヤング・アメリカンズ』は、シンプルで力強い名曲でツアーの定番となったが、いかんせんそれ以外の曲が弱い。

David Bowie- Young Americans

黒人音楽の持つパワフルさやファンキーさはあまり表現しきれておらず、表明的に取り入れて短期間で仕上げた感は否めず、ボウイの長いキャリアの中でもかなりの脱線と言わざるを得ない。

それでも短期間でこれだけの音楽的要素を取り込んだ吸収力はさすがで、この経験は次作ステイション・トゥ・ステイションに存分に活かされるのだった。

75年当時を振り返って、黒人音楽の要素を部分的に取り入れるミュージシャンはいても黒人になりきってしまうこんなファンキー路線の白人ロックスターは皆無だった。

『ヤング・アメリカンズ』は、内容うんぬんよりもまずその事に意味がある。
ちなみにこのアルバムのおかげで白人初の『ソウル・トレイン』出演のオマケ付きとなった。

そしてレコーディングには参加していないが、この時期のツアーのギタリストとして若き日のナイル・ロジャースがオーディションを受けていたが結果は不合格だった。(ボウイとは会っていないらしいが)

その後、レッツ・ダンス ブラック・タイ・ホワイト・ノイズでボウイからプロデュースを依頼されて落選させられた恩返しをする事になるのだった。

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⇒Nextステイション・トゥ・ステイション(1976年)
デヴィッド・ボウイCDアルバムレビュー一覧

コメント

  1. ルドルフ より:

    SECRET: 0
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    素晴らしい、
    流れるような解説。
    「フェイム」は、ジョン・レノンの名前がなかったら1位になるような曲じゃないですよね。

  2. nasumayo より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    そのとおり!
    フェイムはあまりいい曲だとは思いませんね。
    本人はNO1になったから気に行っているみたいだけどジョン・レノンはこの時のセッションに関して否定的なコメントもしていました。

  3. ダンス より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    あら、「フェイム」不人気。ボクもみなさんと一緒で最初に聴いた時は
    好きじゃなかったんだけど、現在聴くとこのアルバムの中で一番かっこ
    いいって思っちゃうんですよね。あの無駄の無さがいいというか。
    ちょうどその時期ってイーグルスの「呪われた夜」もチャートを賑わせてた頃なので、その辺りが当たった理由か?と考えてます。ボウイ自身も
    「フェイム」はファンクと言わずにディスコってあの頃は言ってたような。
    それから、カルロス・アロマーってJBのバックバンドに一時期いたって
    聞いてますよ。このアルバム自体はやり過ぎって言うほど黒人音楽に
    のめり込んでますね。次の「スティション・トゥ・スティション」聴くと本当にやり過ぎだろうって思える。でもここで徹底的にやったから、その次に
    進めたのかも知れませんね。

  4. nasumayo より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    フェイムは悪い曲じゃないと思いますけど元曲になったFootstompinのボウイバージョンを聴くとそちらのほうが遥かに良い曲なんでちょっとなあと思ってしまいます。
    >カルロス・アロマーってJBのバックバンドに一時期いたって
    聞いてますよ。
    聞いた事がありますね。
    たぶんその辺からアイディアを引っ張ってきたんでしょうね。
    アルバム全体から強いエネルギーは感じます。