50歳を超えて新しいものに飛びつくのがキツくなった時期に?発表された原点回帰的な落ち着いたアルバム。
若い頃のボウイが発表当時の頃のボウイを支えるジャケットが示すとおり過去を決して振り返らなかったデヴィッド・ボウイが『アワーズ・・・(hours…)』ではじめて過去に焦点を当てた事の意味とは?
- Thursday’s Child
- Something In The Air
- Survive
- I’m Dreaming My Life
- Seven
- What’s Realy Happening?
- The Pretty Things Are Going To Hell
- New Angels Of Promise
- Brilliant Adventure
- The Dreamers
- We All Gone Through
肩の力が抜けた原点回帰
90年代のボウイはデジタルで取っ付きにくい音楽をやっていたけどその反動で生まれたのがこのアルバム『アワーズ・・・(hours…)』だった。
もともと『アワーズ・・・』は、『Omikron: The Nomad Soul』というゲームのサントラとして製作を開始したのでオリジナルアルバムとしては発表する気がなかったそうだけど、ボウイの事だからどこまで本気にしていいのやら。
ちなみにゲームの内容はこんな感じでボウイ自身もキャラクターとして登場している。なんだかちょっとやってみたくなった。
発表前は『ハンキー・ドリー』と似た感触のアルバムって話だったけど、まあ言われてみればそうかなって程度。
音の感触は妙に軽くてちょっとチープで製作に時間もお金もあんまりかけてないのかなって印象。
オープニング曲『サーズデイズ・チャイルド(Thursday’s Child)』のイントロを聴くとなんとなく懐かしいようなほっとするような気分になる。
女性のコーラスがここまでフューチャーされているのはこれまでのボウイの楽曲にはなかったからかなり優しい印象でアルバムはスタートする。
次の『サムシング・イン・ジ・エアー(Something In The Air)』、残念ながらこの曲は『タイム』(アルバムアラジン・セインに収録)の焼き直しだ。
でも仕方ない。
この『アワーズ・・・』自体のアルバムの裏コンセプトはボウイ自身のキャリアの焼き直しにあるはずだから。
でなきゃ20代の頃の自分に抱きかかえられるこんなジャケット写真にはしなかったはずだ。
これはある意味「これからも頑張るけど過去の遺産にも頼っていくからあんまり期待はしないでね」って言うボウイからのメッセージではないだろうか。
でもそれは普通のベテランアーティストが普通にやっていることで、むしろ50歳を過ぎるまで踏ん張ってきたボウイはやっぱり偉大だったのだ。
だってこんな人は、他にいないしね。
楽曲自体は悪くはないんだけどちょっとインパクトにかけて物足りない曲が多い中、『ニュー・エンジェルズ・オブ・プロミス(New Angels Of Promise)』~後半までの流れと曲のスケール感は素晴らしく、まだまだ現役!って感じ。
特に『ザ・ドリーマーズ(The Dreamers)』はライブで演奏してるのは聴いたことないけど後期ボウイを代表するほどのパワフルな名曲。
アルバム総評
かつてのような革新性や意外性は全く感じないが、収録曲の出来は悪くなく自然体で伸び伸びと制作したアルバムと言える。
残念ながらこの『アワーズ・・・』あたりからボウイの声の衰えが顕著になってきた。
『ハンキードリー』の頃の声で歌ったら名盤って言われたかも?
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