ジギーを引退宣言した後に発表されたカバーアルバム。
『ピンナップス』のタイトルが表すとおりに単純にボウイ自身の好きな曲、影響された曲を集めて演奏しただけのアルバムでこの時期のボウイに不可欠だった『コンセプト』や『キャラクター』は存在しない。
ジャケットに一緒に写っているのはミニスカートの女王と言われたモデルのツイッギー。
- Rosalyn
- Here Comes The Night
- I Wish You Would
- See Emily Play
- Everything’s Alright
- I Can’t Explain
- Friday On My Mind
- Sorrow
- Don’t Bring Me Down
- Shapes Of Things
- Anyway, Anyhow, Anywhere
- Where Have All The Good Times Gone
- Growin’ Up
- Port Of Amsterdam
ストレートなロックンロールアルバム
収録曲は60年代のブリティッシュロックの比較的有名なバンドが中心で、その後の知る人ぞ知るマイナーなアーティストのカバーを得意とするボウイの路線とは大きく違っている。
選曲に関してもアンダーグランド系をあえて排除してストレートなロックンロールを集めたのが分かる。
レコーディング時期は、すでにジギーの引退後なのでバンドはスパイダーズ・フロム・マーズ名義ではない。
ドラムスがバンド解散で田舎に帰ってしまったウッディ・ウッドマンジーからエイズリー・ダンバーに交代している。
息の合ったタイトな演奏でまとめられており、おそらく制作時間がなかった為に引き止められたミック・ロンソン、トレヴァー・ボールダー、ピアノのマイク・ガースンを含めた旧知のバンドメンバーを残しておいたのは結果的に成功だった。
アラジン・セインまでの聴き慣れたバンドサウンドなのでファンにもすんなり受け入れられたのだった。
しかし、この次のアルバムのダイアモンドの犬できっちりとバンドメンバーはリストラされてしまう。
ほとんどの収録曲が原曲のアレンジの基本を残しつつ原曲よりもテンポアップしてバンド演奏はパワフルだ。
それぞれの楽曲が原曲を超えたかどうかは意見の分かれる所だが、明らかに原曲よりも出来が良い曲も収録されている。
『シー・エミリー・プレイ』のコーラスの重ね方やシンセサイザー等の不気味で無機質な終末観のあるアレンジはこの後に発表されるアルバムの『ダイアモンド・ドッグス』を彷彿とさせる。
『エヴリシングス・オールライト』は、明らかに当時デビューして人気だったロキシーミュージックを意識した50’sロックンロール風アレンジでボウイが自分だってやろうと思えばこんな事は1人で出来るんだと主張しているようで面白い。
アルバム総評
ロックンロールナンバーが続いたかと思えば『愛の悲しみ』のようなロマンチックな曲があったりしてやっぱり掴みどころがない部分もあるが、コンセプトもキャラクターもない普通のロックファンとしてのデヴィッド・ボウイをアピール出来たアルバムだった。
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