アルバム、『ダイアモンドの犬』は、ジギー・スターダストから続くボウイのグラムロック三部作のラストアルバムとはなっているものの、前2作のアルバムまでとはかなりサウンドの趣が違う作りとなっている。
ミック・ロンソンをはじめとするバックバンドのスパイダーズと決別してボウイ自らが楽器のほぼ全パートを演奏した意欲作。
- 未来の伝説
- ダイアモンドの犬
- 美しきもの
- キャンディディット
- 美しきもの(リプライズ)
- 愛しき反抗
- ロックン・ロール・ウィズ・ミー
- 死者の世界
- 1984年
- ビッグ・ブラザー
- 永遠に周り続ける骸骨家族の歌
SF小説を元に近未来をイメージした実験作
ジョージ・オーウェルの小説、『一九八四年』を元にイメージを膨らませて出来た『1984年』を軸にコンセプトを作り上げていった近未来的なコンセプトアルバム。
タイトル曲の『1984年』は、『トゥナイト』でデュエットするなど交流のあったティナ・ターナーによりカバーもされている。
当初、この『1984年』を軸にアルバムを構想して舞台化も計画していたが、原作者のオーウェル夫人の反対により計画は中止となった。
そのためボウイは、新たに『ダイアモンドの犬』のコンセプトを作り出した。
イメージは核戦争後の荒廃した世界観とミュータントの物語。
分かりやすく言うと『北斗の拳』の世界観の原型みたいな感じだろうか。
ジャケットになっているイメージキャラクターは、下半身が犬、上半身が人間の半獣半人で美しさやかっこよさを売りにしていた、それまでのキャラクターのジギー・スターダストとアラジン・セインとはだいぶ違ったものとなっている。
それに付随してシングル『レベル・レベル』に登場する新たなキャラクターとして眼帯をした海賊『ハロウィーン・ジャック』が誕生した。
一応アルバム全体の音楽が繋がっているコンセプトアルバムとなっており、かなり実験的な要素も多い。
特に歌詞はウィリアム・バロウズに影響されたカット・アップ方式を試みている。
これは単語や文節ごとにキーワードとなる歌詞をカードに書いて裏返しにしてランダムに選んでつなぎ合わせて歌詞にしていく実験的な方法だ。
当初は本当に紙に書いた文章を切り刻んで作詞していた。
当時の実際にボウイが作詞している動画がこちら。
つまり、この『ダイアモンドの犬』の歌詞カードを読んで意味など考えても無駄なのだ。最初から意味などないのだから。
組曲的な構成にシングルを加えた内容
『美しきもの』~『キャンディディット』~『美しきもの(リプライズ)までは、組曲的な流れになっており、ボウイの全キャリアを通じてこのプログレ的な構成はこの『ダイアモンドの犬』でしか見当たらない。
アルバム中、シングル曲の『Rebel Rebel(レベル・レベル)』だけが分かりやすいポップな曲で浮いてる印象を受ける。
あからさまにローリング・ストーンズの曲調をパクってはいるが、ボウイが考えだした開放弦を効果的に使ったシンプルかつ繊細なギターリフが印象的な曲調になっている。
ファンもボウイ本人もお気に入りのナンバーで、最後までライブの定番として代表曲のひとつとなった。
この曲は、2000年代に入ってからは、日本ではボーダフォンのCM曲としても使われていた。
ラストの『永遠に周り続ける骸骨家族の歌』のアナログ盤では手動で針を外さない限り無限ループして本当に永遠に終わらない曲だった。
CDになってフェイド・アウトになってしまったのは、音飛びと勘違いされるのを恐れての事だろうか?
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ボーナストラック
現在流通している通常版には収録されていないが、かつてライコ盤では、『John, I’m Only Dancing』のディスコダンスバージョンや『1984年』から枝分かれして生まれたアルバム未収録曲の『Dodo』等のボーナストラックが収録されていた。
アルバム総評
ボウイ自身が『ダイアモンドの犬』のアルバム全体のほとんどの楽器パートを演奏しているためにその演奏自体が、ややひ弱で稚拙な印象を受けるが、丁寧に作られており、それまでのアルバムにない重厚なサウンドとなっている。
音楽性ではテーマ曲『1984年』に見られるように、ボウイの興味が徐々にロックからディスコ・ソウル方面に移ってきているのが興味深い。
リリース | 1974年 |
プロデューサー | トニー・ヴィスコンティ/デヴィッド・ボウイ |
チャート | 全英1位、全米5位 |
Next⇒ヤング・アメリカンズ(1975年)
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