スマッシング・パンプキンズ/サイアミーズ・ドリーム(Smashing Pumpkins/Siamese Dream)

オルタナティヴ

ファーストアルバム不発の後のスマパンの大出世2ndアルバム。

ビリー・コーガンの奔放なアイディアとそれを表現する作曲能力とギターのテクニック、低音を中心にタイトにまとまったバンドサウンドは90年代ロックの金字塔。

Dragon Ashが『Grateful Days』でサンプリングした代表曲『トゥデイ』収録。

  1. 天使のロック
  2. クワイエット
  3. トゥデイ
  4. ハマー
  5. ロケット
  6. 武装解除
  7. ソマ
  8. 奇人U.S.A.
  9. マヨネーズ
  10. 宇宙少年
  11. シルヴァーファック
  12. スウィート・スウィート
  13. ルナ
  14. ピスアント
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ダーシーがいてくれて良かった

思えばスマパンを聴くようになったきっかけはダーシーだった。

当時のロッキング・オンのピンナップに載っていたティーカップを持って微笑んだベースのダーシーの姿があまりにもかわいかったのでこの『サイアミーズ・ドリーム』のCDを衝動買いしてしまったのだった。

ダーシー

当時はスマパンの音楽性などはまるで知らなかったから、やや分かりにくい面のあるスマパンのデビューアルバム『ギッシュ』の前に『サイアミーズ・ドリーム』を聴いたのはむしろ良かったのかも知れない。

スマパンの最高傑作アルバム

『ギッシュ』も素晴らしいアルバムなんだけど、評価はあまりされないまま、ニルヴァーナの2番煎じ扱いだったスマパンが、本格的に評価されセールス的にも成功をつかんだのがこの『サイアミーズ・ドリーム』だ。

最初から最後まで1曲たりと駄曲のない素晴らしく美しくアグレッシブなアルバム。

オープニングの『天使のロック』からデビューアルバムとはギターの歪みかたのレベルが違う!
かなり歪んでるんだけど、音が尖ってなくて丸っこい。

何となくデヴィッド・ボウイの名盤であるジギー・スターダストのミック・ロンソンのギターサウンドを思い起こさせる。

音楽的にはそんなに近くはないけど、アルバム全体を通してどこかイメージ的に近いものを感じる。

当時のインタビューで実際にインタビュアーにそれを指摘されてビリー・コーガン本人も認めていた。

そしてシングルカットされた『Today』は、すでにロッククラシックになったと言っても良いだろう。
この曲を創った時期は最悪だったとビリーは言うけど、ポジティブさに満ち溢れた名曲。

『ハマー』や『ロケット』を聴くとこのバンドの核はビリーのギターのジミーのドラムだと実感できる。

リズムマシーン的なデジタルっぽいビートを力強いビートを刻んで引っ張るドラムスの存在なくしてこのバンドの成功はあり得なかったように思える。

『武装解除(Disarm)』は、バックにストリングスを用いた挑戦的なアレンジの楽曲。
こういった変化球があるのもスマパンの大きな魅力でアルバムのアクセントにもなっている。

静かに繊細に始まり轟音で盛り上げ引きずり回すようなギターソロを超えてまた静かに終わる『ソマ』は、アルバムを体現しているようだ。

『奇人U.S.A(Geek U.S.A)』のバンドの一体化した演奏とビリーの凄まじくもテクニカルなギターソロを聴けば彼らがただのノイジーなだけのオルタナティブバンドではないと分かるはず。

轟音でかき鳴らすフォークロック風の『マヨネーズ』、『宇宙少年』は、どこかノスタルジックでスペイシーな名曲。

凄まじいギターリフで攻める『シルヴァーファック』でアップしたかと思えば、ルナ『Luna』で再びクールダウン。

このアルバムの中での緩急のつけ方もお見事。

間奏でシタールを効果的に使った『ルナ(Luna)』、普通に弾き語りできそうな『Sweet Sweet』と後半に行くに従って毒が抜けて浄化されていくような流れになってアルバムは終わる。

オルタナの枠を超えた90年代を代表する名盤

ちなみにあちこちのネット上のデータに堂々と掲載されている(amazonでも)某音楽評論家のビリーのアイディアをジェイムスがギターで具体化した云々の解説に関してはアルバムのギターのフレーズまでビリー・コーガンがほぼ一人で作ったものだから明らかな間違いである。(逆にジェイムスのアイディアをビリーが具体化した曲は何曲か収録されている)

高速リフでテンポが速く始まり急にゆったり遅くなる、突然の転調、計算されつくしたリズムとギターリフは勢い一辺倒で騒がしいだけの大半の当時流行したグランジ・ロックをすでに飛び越えてしまっている感がある。

意図的にザラザラとした質感の音色と異常に強調された低音にメランコリックなメロディと静と動を繰り返すプログレ的な曲展開。

この『サイアミーズ・ドリーム』が発表されるまでそんなアルバムは存在しなかった。

そしてその後のスマパンでも、これほどのアルバムは作れなかった。

へヴィーなサウンドの原因のひとつは、曲のいくつかでビリーコーガンのギターのチューニングが半音下げになっている事が大きいようだが、普通こうするといかにもハード・ロック、ヘヴィメタ的なサウンドになってしまう。

ところが、この時機のスマパンは、そうなってはおらずそれが非常に新鮮に聴こえた。

当時の来日ライブについて

アルバムを発売直後にスマパンの来日ライブが渋谷ONAIRであったのだがハコが小さすぎて売り切れ状態だった。

それでも、どうしてもライブが観たかったので渋谷のオンエアーイースト前まで行ってダフ屋とギリギリまで交渉していたらなんと憧れのダーシーの会場入りに偶然巡り合った!

信じられない位、肌が白くてかわいかった~って今考えるとライブ開始の30分前に楽屋入りってナメてるよなぁ。

ライブの内容はアルバム『サイアミーズ・ドリーム』以上にとてつもなく良かった。
特にビリーのギターテクとジミーのドラミングの迫力には圧倒された。

それまで観た中でのベストライブ!そしてこれからもあらゆるライブの中で間違いなくベストライブだと思う。

しかし、次の来日から彼らは大箱クラスになり、演奏も徐々にヘビメタ化して行ってしまい、徐々に興味が薄れてしまった。

マジックが掛かっていたのはこのアルバムの時期だけだったけど、スマッシング・パンプキンズが一番勢いがある時期をリアルタイムで聴けたのはすばらしい体験だった。

  • オリジナルリリース 1993年
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Siamese Dream – スマッシング・パンプキンズ

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